1.1 尿量が少ない

1.1.0.0.1 他の所見と乏尿

• 乏尿患者で血圧が高い場合、糸球体腎炎や多のう胞腎である可能性が高い。
• 乏尿に血尿を伴った場合は糸球体腎炎、溶血疾患、急性尿細管壊死を疑う。

1.1.0.0.2 FENaの計算

術後患者の尿量低下などで夜中にコールされたケースなどでは、いちいち深夜の採血などせずに 日中の血清Naデータを使用してもまず問題にはならない。

$$FENa=\frac{U_{Na}/P_{Na}}{U_{Cr}/P_{Cr}}\times 100$$

1.1.1 尿量低下を生じる疾患

1.1.1.1 急性尿細管壊死

• 一過性の腎の虚血により生じる。
• 原因として多いのは、一過性のショック、脱水、敗血症、横紋筋融解症、出血など。
• アミノグリコシドや造影剤などの薬物によっても生じ得る。

1.1.1.1.1 治療

• 脱水や低血圧、原因薬剤の中止といった原因除去を行う。
• 高カロリー^1.1/低蛋白の栄養を維持する。
• 輸液は1/2生食などを用い、1日尿量に500mlを加えた程度^1.2を輸液。

1.1.1.2 薬剤性腎症

1.1.1.2.1 アミノグリコシド

• 用量依存性に急性尿細管壊死を生じる。
• ゲンタシンで、普通の腎機能の人に1日1回180mg程度を落とした程度ではまず腎障害は来ない。
• たとえ検査データに以上が生じても、薬剤の中断でほとんど元に戻る。

1.1.1.2.2 バンコマイシン

• アミノグリコシド系以上に腎障害は多い。
• 特に、NSAIDs、アミノグリコシド、ACE阻害薬のどれか2者と併用^1.3していると腎機能障害はほぼ必発になる。
• 腎不全があると血中濃度の上昇は予想以上なので、血中濃度のモニタリングは必ず施行する。

1.1.1.2.3 ACE阻害薬

• 腎の輸出細動脈を拡張し、糸球体の濾圧を下げることで見た目のGFRを低下させる。
• 腎障害性があるわけではなく、腎の負担を取っているだけなのでCREがわずかに上がった程度で気にする必要は無い。
• 肝排泄型のACE阻害薬を用いても、腎機能傷害が減るわけではない^1.4ので注意。
• 基本的には腎動脈の狭窄がある患者においてのみ、不可逆的な腎障害を起こす危険がある。持続的にCREが上昇してくるケースでは注意。

1.1.1.2.4 造影剤

• 造影検査を受ける患者で、以下のような人は腎障害を生じる可能性がある。
  • CRE$>$1.2mg/dl or CCr $<$50 ml/min
  • 糖尿病、うっ血性心不全
  • 年齢65以上
• 対策は以下のことを施行
  • 輸液を1ml/kg/hr で検査12時間前から施行
  • N-アセチルシステイン^1.5600mgを検査前に12時間ごと2回、検査後2回内服

1.1.1.2.5 NSAIDs

• プロスタグランジン産生阻害を介して腎血流を低下する。
• 実際に少々服用したぐらいで腎障害が来るわけではないが、漫然と処方されているケースで気がついたらCREが上がっていた…ということが多い。
• ハイペン/モービックといったCOX-2親和性の高いNSAIDs^1.6はいくらか腎障害が少ないが、その分鎮痛効果も低い…。

1.1.1.3 ネフローゼ症候群

P.参照。

1.1.1.4 横紋筋融解症

• スタチン内服中の患者、熱中症、重篤な脱水、外傷後などさまざまな状況で生じる。
• 尿量低下、血清CK、LDH、GOTの上昇、尿中ミオグロビンの上昇をみる。
• 尿潜血陽性にもかかわらず鏡検すると赤血球は出ていない。
• ミオグロビンの腎障害により急性尿細管壊死を生じる。

1.1.1.4.1 治療

• CKの上昇が10000ぐらいまでなら、輸液のみで対応可能。
• 尿量を300ml/h程度に保つように生食を輸液^1.7。
• 尿のアルカリ化($\rightarrow$ P.)を行うことが推薦されているが、効果ははっきりしていない。
• 入院後輸液を開始、経時的にCKを測定し、ピーク値を超えるまで上記の量の輸液を継続。
• 利尿薬は乏尿例で用いると管理が楽になる。
• N-アセチルシステイン^1.8が効果があるといわれている。
• どうしようもない症例では透析を考慮。

1.1.1.5 透析の適応

慢性腎不全の患者では、CREが5を超えた段階でいつでも透析導入の可能性はある。 ただし、糖尿病性腎症ではこれよりも低い値で透析導入^1.9になることはよくある。

• 代謝性アシドーシス
• コントロール不能の高K血症
• 尿毒症症状(嘔気/嘔吐/食思不振)
• 肺水腫
• 心のう液貯留
• 利尿薬抵抗性の浮腫
• 重篤な貧血