正常な人間の気道は、鼻を通じて加湿された空気を肺に取り込んでいる。 鼻は空気中の異物に対するフィルターの役割も果たしているが、さらに人間の気道は、 扁桃から分泌される免疫グロブリンを利用して免疫力を高めてもいる。
また、時折声門を閉じ、咳をすることで音速に近い空気の流れを気道内に作り出し、異物を外に排除する。
気道内に挿管チューブを入れ、カフをふくらますことは、こうした機能が奪われることになるだけでなく、 誤嚥の合併、セデーションの必要性、さらに気管内挿管をする際に、必ず酸素化がなされない時間が生じることなど、 患者にとっての問題は非常に多い。
気管内挿管を決断する場合、こうした患者から奪われる部分と、 気管内挿管により得られるメリットとのバランスでものを考えなくてはいけない。
ただし、原則として、気管内挿管を迷った場合は、とりあえず挿管しておく。
挿管して後悔するほうが、挿管しないで患者を危険にするよりもよほど優れた判断であるのは事実である。