拡張障害型心不全は、単独でも、収縮不全と併発して生じることもある。 拡張障害を単独で生じた患者の場合には、心臓の圧容量曲線を描いてみると、 その異常は拡張期の心室内圧の上昇だけで、心室容量は変化がない(図1.1のA)。
心室内圧の上昇が極端になってくると、患者は安静にしていても、心不全の症状を自覚(NYHAI V 度の状態) するようになる。こうした患者を治療することで、症状の改善は得られるが、 患者の圧容量曲線は異常なままである。
一方、収縮不全の患者の場合(図1.1のB)には、上記とは異なる。
患者の容量圧曲線は、収縮期にも変化を生じ、またEFも低下する。さらに、心不全の症状のある患者の 場合には、拡張期の心室圧も上昇し、このために拡張期の容量圧曲線も変化する。 このため、収縮不全による心不全の患者の場合には、多かれ少なかれ、拡張障害も伴っている。
これとは逆のケースもありうる。患者の心臓の収縮能力は、異常ではないものの、軽度に障害され、 一方で拡張障害も併発しているため、EFの割には患者の拡張期の心室圧は高く、症状は重篤になる(図1.1のC)。