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: 1.4 定義 : 1. 理論的なこと : 1.2 拡張障害と収縮障害   目次


1.3 拡張障害の成立機序

1.3.0.1 心筋の弛緩の障害

心筋の収縮と弛緩は、心筋細胞質内のCaイオン濃度で調節される。 心筋は、筋小胞体に貯蔵されているCaイオンが細胞質内に放出されることで収縮し、 上昇した細胞質内Caイオンが筋小胞体に再吸収されることで弛緩する。

細胞内にはCaイオン濃度を制御している数多くの分子が存在するが、 拡張障害を呈した心不全患者においては、その中でも筋小胞体(SR)/滑面小胞体のカルシウムATPases(SERCA) の活性が低下している。

高血圧性の心筋肥大の患者では、SERCAの活性は低下し、またその制御タンパクであるホスホランバンの活性が 上昇している。この結果、細胞質からのCaの排泄が遅れ、心筋の弛緩速度が低下し、拡張障害の状態となる。

また、交感神経刺激により上昇したcAMPの濃度の上昇はSERCAの活性低下をもたらし、心拡張障害を悪化させる。

SERCAの働きはエネルギー依存性のため、虚血に陥った心筋では、心筋の弛緩が障害される。

さらに、甲状腺機能低下症の患者では、SERCAの活性が低下しており、拡張障害を生じる。 逆に、甲状腺機能亢進症の患者においては、心臓の拡張能が亢進している。

1.3.0.2 受動的な心室の拡張

心筋の弛緩に加え、心臓は血流により、受動的に拡張する。 心筋の繊維化などで、心筋のコンプライアンスが低下しても、やはり拡張障害は悪化する。

アミロイドーシスのような、何らかの物質の沈着による心筋障害の患者では、 心筋コンプライアンスの低下により、拡張障害型の心不全を生じている。

1.3.0.3 内分泌環境の変化

レニン-アンギオテンシン系が亢進すると、血圧が上昇するとともに、心筋の拡張機能が低下する。

アンギオテンシンI I、エンドセリンの両者はともに、血中濃度が上昇すると心筋肥大を招く。


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admin 平成15年2月14日