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2 患者の分類

2.1 病歴と起炎菌との関係

肺炎患者は、治療を行う場所(外来か、入院か、ICUか)、心肺合併症の有無、 いくつかの"修飾因子"(特定の起炎菌への感染リスク)により、大きく4つの患者グループに分類する。

喫煙歴の有無は、患者の分類には用いることはない。

以前の肺炎治療のガイドラインでは、患者の起炎菌を推定する手がかりに、患者の年齢を用いていたが、他のリスクの考慮なしに 患者の年齢だけを考えても、患者の起炎菌の推定にはほとんど役に立たないということがわかってきた。

高齢者でも"非定型"肺炎を生じることは珍しくはなく、また特定のリスクをもつ人であれば、 年齢には関係なく腸管内グラム陰性桿菌の感染を生じうる。年齢が単独の危険因子として証明されているのは、 耐性肺炎球菌の感染だけである。


表: 特定の起炎菌への感染の危険因子
・薬剤耐性肺炎球菌
65歳以上
3ヶ月以内の抗生剤治療
慢性アルコール中毒
ステロイドの内服中の患者
複数の臓器障害
子供との接触が多い患者
・腸管内のグラム陰性菌
老健施設からの患者
心臓、呼吸器疾患の患者
3ヶ月以内の抗生剤治療
複数の臓器障害
・緑膿菌
気管支拡張症の患者
1日10mg以上のステロイド治療
7日以内の広域スペクトルの抗生剤治療
低栄養状態



表: 来院したときの患者の状態と起炎菌
患者の状態 考えられる起炎菌
アルコール中毒 肺炎球菌、嫌気性菌、結核菌
COPD 肺炎球菌、インフルエンザ桿菌、ブランハメラ
老健施設の患者 肺炎球菌、グラム陰性桿菌、黄色ブドウ球菌、嫌気性菌
歯の汚い患者 嫌気性菌
気管支拡張 緑膿菌
気管支の閉塞 嫌気性菌
最近の抗生剤使用 耐性肺炎球菌、緑膿菌

2.2 実際の肺炎患者分類

市中肺炎の患者に対する抗生剤の選択は、大きく4つのパターンに分類できる。

分類の方法は、

によって決まる。

分類の方法は、以下のとおり。治療する場所、患者の状態により大きく4つに患者を分類し、最終的に6つの小分類ごとに、 主に予想される起炎菌、それに対して推薦される抗生物質が決められている。

  1. リスクの低い、外来で診られそうな肺炎患者
  2. 心不全、COPDの既往のある外来患者
  3. 入院の必要な肺炎患者で、ICUまでは必要ない患者
    1. 心不全、COPDの既往があるか、ほかの修飾因子がある(老健施設の入所者も含む)
    2. 特に治療のリスクのない肺炎患者

  4. ICUへの入院の必要な肺炎患者
    1. 緑膿菌の感染リスクがある患者
    2. 緑膿菌の感染リスクのない患者

すべての肺炎患者において、肺炎球菌は今でも最も多い起炎菌である。 たとえ喀痰培養などで何の起炎菌も同定できない場合でも、 肺炎球菌が原因となっている可能性がある。

抗生剤耐性の肺炎球菌は増えているが、その多くは低レベルの耐性であり、これが今後大きな問題となってくるかどうかは まだ議論がある。

すべての肺炎の患者は、それが混合感染であっても単独の感染であっても、クラミジアやレジオネラ、マイコプラズマなどの菌に 感染している可能性がある。いわゆる"非定型"肺炎という言葉は、起炎菌を同定するには正確ではない。

緑膿菌の感染は考えなくてはいけないが、特定のリスクのある患者以外には最初から起炎菌になることは少ない。


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admin 平成16年11月12日