今までのような評価方法で、心エコーを用いた心機能の評価はかなり正確にできる。 一方で、こうした心機能評価の方法はまだまだわかりにくく、人に説明しても分かってもらえないことも多い。
エコーを用いた心機能の評価の結果を相手に分かってもらうには、 計測の結果を右心カテーテルで得られる数字に置き換える必要がある。 こうした数字はルーチンの圧較差測定以外に、以下のようにして算出できる。
左室流出路を大動脈弁直前の直径で、右室流出路を肺動脈弁の直前の直径で測定する。
この値と、ここを通過する血流速度の時間積分値から心拍出量が測定できる。
時間速度積分値(TVI)は、パルスドップラーや連続ドップラー法を用いた血流速度の記録から、その ピーク値をトレースすることで測定できる。(図2.12)
血流速度(cm/sec)の時間積分なので、単位はcmとなる。
この値はつまり、血流を測定した部分の血流が 1秒間に何cm移動したのかを表しており、 この値に流出路の断面積をかければ心拍出量が計算できる。
流出路の面積と時間速度積分値とを用いた拍出量の計算は、右室/左室の心拍出量を求める以外に、 例えば僧帽弁閉鎖不全の患者で、逆流血液量を計算する用途に使ったりもする。
肺動脈血流は、傍胸骨単軸で測定できる(図2.13)。この値は、普段はあまり用いることはないが、 肺動脈圧を算出する場合には、肺動脈弁逆流の速度、 そして肺動脈血流速度がピークに達するまでの時間pulmonary acceleration time(図2.14)を使う。 この値は正常で120ms以上であるが、肺動脈圧が高くなるにつれて短くなる(P.参照)。