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3 二日酔いの治療

酒を控え、時間をかけてゆっくり休むのが最良の治療ではあるが、いつもそうできるわけがない。

研修医が"もうだめです〜"などと言おうものなら、"魂で飲め""気合があれば酔わない" "僕の顔をつぶすの?"などと責められ、吐くまで飲まされるのが落ちである。

二日酔いの不快な症状を抑えるため、いくつかの方法が提案されている。

3.1 酒の飲み方

どうせ飲まなくてはいけないなら、より"clear"な酒、具体的にはラム、ウォッカ、ジンをベースにしたものを飲む。

糖分を多く含んだ食べ物、フルーツといったものを多くとると良い、といわれるが、臨床研究はされていない。

水分を十分にとることは基本ではあるが、二日酔いの重症度、ホルモン動態に与える影響は有意に良い影響を与えるものの、 その効果は必ずしも十分なものではない。

3.2 NSAID

アスピリンやイブプロフェンをはじめとするNSAIDは、アルコールの過量摂取に伴うサイトカイン類の産生を抑える。

飲酒前にNSAIDを服用しておくことで、翌朝の二日酔いの重症度が減少した、という報告は何本かあり、 いずれも統計的に有意な結果を出している。

ただし、NSAIDは胃粘膜を荒らすため、飲酒翌朝の服用では、かえって消化管を荒らしてしまう可能性が指摘されている。

同じような痛み止めにアセトアミノフェンがあるが、これは肝障害を生じうるため、 二日酔いの予防には禁忌である。

3.3 セロトニン阻害剤

セロトニン(5-HT)血中濃度は、アルコール摂取で上昇し、嘔吐や頭痛の原因になる。

セロトニンレセプターは多数あるが、嘔吐に関係するセロトニンレセプターである5HT-3の阻害薬12は、 もともとシスプラチンによる吐き気を抑えるために開発され、臨床で用いられている。

これを二日酔いに用いた報告があるが、明らかな効果は得られなかったという。

高価なくすりでもあり、保険適用もないため、実際に試してみる機会はまずないであろう。

3.4 ビタミンB6

抗結核薬に伴う肝障害の予防に古くから使われるものであるが、機序は正確にわかっていないものの、 二日酔いの症状を予防することが報告されている。

このスタディで用いられたビタミンB6の量は、pyritinolというビタミンB6の変化体を1200mg、飲み会の前、 最中、最後の3回に分けて服用するというものであるが、 この量は非常に多い(普通用いられる量は、1日量で400〜600mg程度13である)。

日本で推薦されているビタミンB6の摂取量は、多くても一日100mgまで14。 pyritinolとは製剤が違うため、 単純な比較はできないが、自閉症のメガビタミン療法という代替療法 を行っている施設で、1日に用いるビタミンB6の量が、1年かけて慣らしていっても最大1000mgまでである。

実際に用いる量については、あくまでも自己責任で。

3.5 漢方

欧米のトライアルでは、Liv.52という、肝保護作用がある漢方薬15が効果があったと報告されている。

これが日本の製剤でなんにあたるのかは、わからない。効能は肝の代謝刺激作用、肝保護作用となっている。

日本では、トライアルはないものの、五苓散に加えて半夏瀉心湯、あるいは黄連解毒湯を服用することが 勧められていた。


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admin 平成16年11月12日