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4 実際の処方例

筆者が良く行う方法を述べる。これがベストではないし、自分が大丈夫だった、というだけで、 ほかの人が飲んでどうなるか、は保証できない。

薬局で手に入る薬はほとんどないため、医療従事者以外は実行不可能16であろう。

4.1 飲み会前

飲み会の2時間ほど前に、以下の薬剤を飲んでおく。

要は、NSAIDを1種類、ビタミンB6を1種類、1日量を服用する。ハイチオールについては、側鎖に-SHの付いているものなら 多分なんでもいいはず。例えば、N-アセチルシステイン17など。

4.2 飲み会中

教科書的には、食事を多くとり、水を多量に飲むよう勧められているが、これは無理である。

大体、飲み会で大量飲酒をするのは"男らしさ"を上司にアピールする、といった下らない理由からで、 教科書的な賢い飲み方ができる人は、最初から二日酔いにはならない。

飲み会の最中は、普段どおりのペースで。

事前に薬を飲んでいくと、多少は二日酔いになりにくくはなり、また酔いにくくなる。 しかし、せっかく薬で得られた安全マージンを"もっと多く飲む"ために使ってしまうと、大変なことになるので注意が必要。

4.3 飲み会の後

とにかく、家に帰ったら水分を補給する。アルコールにより脱水となり、このまま寝てしまうと翌朝がつらい。 翌朝気持ち悪くなってしまうと水も飲めなくなってしまうため、飲めるうちに可能な限り水分を取っておく。

大体1000ml程度の水分を、速やかに補給すべきだが、この場合に、水分の吸収を早める可能性があるのが、 glucoseとNaの同時摂取である。

要は、ポカリスエットなどのスポーツドリンクであるが、これらは図2のような機序で、水分の吸収を早めている。

図 2: 水は、ただ飲んだだけでは浸透圧差で受動的に吸収されるだけである。glucoseとNaを同時に摂取すると、 糖分が小腸に能動輸送で吸収される際、Naに引っ張られる形で水も吸収される。
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こうした製剤は、もともとはこれら感染症で脱水状態になった小児の救命のために作られた。

下痢の中には大量のNaが含まれているが、単に塩水を経口で補っても、小腸からは吸収されない。 ところが、経口の塩水の中に、糖分が加わると話が違ってくる。下痢を生じている、病的な小腸粘膜であっても、 糖分は吸収される。小腸中に、糖とNaが同時に存在していた場合、これらは図のように、いっしょに吸収される。

この際、Naとともに水分も移動するため、Na、糖、水分を同時に摂取すると、吸収速度が飛躍的に高まる。

この効果は、糖とNaとが1:1の割合で含まれている際に最大になるが、 市販のスポーツドリンクは、こうした機序を利用するには糖分が多すぎ、一方塩分が少なすぎる。 ユニセフが推薦している経口保水塩は、吸収スピードが普通の水の25倍だが、 市販のスポーツドリンクは、高々10倍程度である。もっとも、二日酔いの予防には、これで十分だが。

ユニセフ推薦の処方どおりのもので、市販されているものでは、大塚製薬のOS-1があるが、 普通の店では手に入らないかもしれない。

まだ意識が残っているなら、寝る前にNSAIDを1錠(筆者の場合はロキソニンか、胃にやさしいハイペンなどを愛用) 服用しておくと、翌朝の頭痛が減少する。

気持ちが悪い場合は、極力吐いてしまったほうがいいため、その日のうちにナウゼリンやプリンペランを用いることは、 勧められない。

4.4 翌朝

上手くいくと、かなり楽なはずであるが、二日酔いの症状が出てしまっていた場合は、漢方薬を用いる。

もっとも、五苓散にしても、黄連解毒湯にしても、かなりまずいものなので吐いてしまうかもしれないが…。

迎え酒の代わりに、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬(セルシンなど)を服用すると、一応二日酔いの症状は 軽減する。もっとも眠くなってしまうため、仕事がある人には禁忌。

朝になっても気分不快が残ってしまい、どうしても仕事をしなくてはいけないとき、 最後に頼れるのは"気合"のみである。がんばってください。


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admin 平成16年11月12日