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: 2.2 倦怠感
: 2. 内分泌の問題
: 2. 内分泌の問題
目次
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2.1 血糖値が高い
入院中の患者は、食欲の有無や発熱、点滴製剤などで、血糖値が大きく左右される。
経口血糖降下剤は細かい調節が全く効かないため、入院中の患者では低血糖等の
合併症が増える可能性がある。
このため糖尿病の患者が急性期疾患で入院した際は、原則としてインスリンによる血糖管理に切り替える。
2.1.0.1.1 インスリン導入の原則
- 最初の3-4日ほどは、血糖4検+スライディングスケールにより血糖をコントロールするとともに、1日に必要なインスリンの単位数の目安をつける。
- 血糖のコントロールがつき、1日に必要なインスリンの単位数が大体分かったら、その総量の2/3を朝に、1/3を夕食前に振り分けて持続型インスリンの2回打ちにする。
- その後、朝の血糖値が高かったら夕のインスリンを増量、夕のインスリンが高かったら朝のインスリン量をそれぞれ増量して血糖コントロールを行う。
- 退院時、1日に必要なインスリン量が15単位以内であれば、たいていは経口血糖降下薬に変更可能である。
2.1.0.1.2 スライディングスケールのかけかた
普通に血糖値の高い患者で、ショックになっていたりしていなければ、インスリンの皮下注射による
スライディングスケールを行う。
血糖値を1日4回測定(典型的には、6時、11時、17時、21時)し、
その値に応じてヒューマリンRを皮下注射する。
表 2.1:
皮下注によるスライディングスケールの例。これに、21時のヒューマリンNの皮下注を加える。
血糖値 |
ヒューマリンR |
350- |
8-10単位 |
300-349 |
8単位 |
250-299 |
6単位 |
200-249 |
4単位 |
200以下 |
0単位 |
|
大事なのは眠前(21時頃)に少量のヒューマリンNを皮下注射することで、これを行わないと、夜間の血糖コントロールができない。朝6時の血糖を120程度に下げることを目標に、2-4単位を皮下注する。
2.1.0.1.3 インスリン量の調節のしかた
- スライディングスケールで血糖値が安定したら、1日に必要なインスリンの全単位数のうち2/3を朝食後、1/3を夕食後の2回に分けて皮下注する。
- 朝食前のインスリンは持続型インスリン:レギュラーインスリンが7:3で混合したもの2.1を用いる。
- 夕食前のインスリンは5:5で混合したものを用いるのが理想2.2。
- 最初この量で開始し、血糖値を見ながらインスリンの量を調節する。
I型糖尿病患者は、全身麻酔の手術中は5%ブドウ糖水1000mlにKCl 20meqを溶解し、100-200ml/hのスピードで静注、同時にレギュラーインスリンを1-3単位/hの速度で静注する。
患者の血糖値は1時間ごとに測定し、血糖値を120-190の間に維持するようインスリンの静注速度を調節する。
大きな手術の際には、I I型糖尿病の患者もインスリンの補充を受ける必要がある。この場合、1000mlの5%ブドウ糖水に20meqのKClと10単位のレギュラーインスリンを加えたものを100ml/hの速度で持続点滴する。
全身麻酔を必要としないような手術の際は、経口薬の続行または皮下注射のインスリンで血糖コントロールをはかる。
2.1.0.3 糖尿病性ケトアシドーシス
- インスリン治療中の患者が感染症を合併したり、治療を中断したりして発症。
- 原因不明の腹痛、嘔気で初発することもあり注意が必要。
- 入院する糖尿病患者の1.4%はDKAで入院する。
- 患者の4割は本疾患を再発する可能性がある。
- アルコール性ケトアシドーシス
- 血液中エタノール濃度は通常高いが、正常のこともある。
- 血糖値は正常または低値。
- 尿毒症性アシドーシス
- ケトン体は陰性。
- BUNとCREの著明な上昇をみる。
- 血糖値は通常300以上に上昇している。
- 血液ガス上はアニオンギャップの開大したアシドーシス。
- 高血糖のため、血液中Na濃度は通常わずかに低下。
- DKAは腹痛を生じ得るが、AMYのわずかな上昇はDKAにはよくみられる。
- 輸液
- 患者に不足している水分は、通常6-8Lにおよぶ
- 最初の輸液には生食を用い、まずは最初の1時間に500-1000mlを点滴する
- その後は輸液スピードを200-300ml/hに下げ、血糖値が300以下になったら1/2 生食に輸液を変更する
- インスリン
- まずはレギュラーインスリン10単位をボーラスで静注。
- その後0.1U/kg/h のペースで持続静注2.3開始。
- 血糖値が250をきったら、静注スピードを1-2U/hに減量する。
- DKA改善の指標は血糖値の正常化ではなく、HCOまたはアニオンギャップの正常化である。
HCO濃度が正常化するまでは、インスリンの静注スピードはこれ以下に下げない
2.4
- 血糖値は2時間ごとに測定する
- 電解質管理
- DKA患者では、Kは総量で300-500mEq 不足している。
- 血液中のK濃度に応じて、表2.2のように輸液製剤中にKClを加える。
- 治療に伴い、Pの不足も高頻度に出現する。予後には影響しないが、測定すべき。
表 2.2:
血糖値に応じたKCl混和量
血液中K濃度 |
KCl混和量(mEq KCl/L) |
5.3 |
加えずに輸液続行 |
5.0-5.3 |
10 |
4.5-5.0 |
20 |
4.0-4.5 |
30 |
3.5-4.0 |
40 |
3.5 |
40 |
|
2.1.0.3.4 インスリン持続静注によるスライディングスケール
患者の意識状態が悪くなるほど血糖が高いとき、ショック状態やアシドーシスになっているときなどは、
網細血管が収縮しているため、インスリンを皮下注しても吸収されない。
こうした場合にはシリンジポンプによるインスリンの持続静注を行うが、
落ち着くまでは、最低2時間おきの血糖チェック、6時間おきの血中K濃度のチェックが必要になる。
静注する製剤は、ヒューマリンRを50単位、生食50mlに溶解したもの(1ml=1単位)を用いる。
表 2.3:
持続静注のスライディングスケールの例。緊急に血糖コントロールをつける場合は、
最初にヒューマリンRを10単位静注してから持続静注にする。
血糖値 |
静注量 |
80以下 |
1.0ml/h |
81-120 |
1.5ml/h |
121-150 |
1.7ml/h |
151-180 |
2.0ml/h |
181-200 |
2.2ml/h |
201-220 |
2.5ml/h |
221-250 |
3.0ml/h |
251以上 |
3.5ml/h |
|
2.1.0.4 高浸透圧性昏睡
- 夏場の救急外来や、糖尿病患者にIVHを開始したときなどに生じうる。
- 感染をきっかけに生じることもある。
- 高血糖により利尿を生じ、著明な脱水を生じている。
- 高血糖 通常600mg/dl 以上。
- 血液浸透圧 340 mOsm/L 以上。
- Na は高血糖により見かけ上低下。
- 血液ガスは正常範囲。
脱水の補正とインスリン静注を行う。
- 輸液
- 治療開始時は生食を用い、最初の1時間で1000mlを点滴する
- その後は尿量を見ながら500ml/h程度に減量し、輸液も1/2生食に変更
- インスリン
- 通常は輸液のみで血糖は下がるため、ボーラス量は用いずに静注インスリンを1-2U/hで開始
- 血糖値が300以下に下がったらスライディングスケールによる皮下注に変更
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admin
平成16年8月5日