気道の確保を行っても自発呼吸が回復しない場合、人工呼吸を行う。
口対口の人工呼吸は感染の危険が大きく、勧められない。 院内であればどこでもアンビューバッグがあるため、こちらを用いた換気を施行するほうが理にかなっている。
マスクと顔面との密着をはかると同時に、気道をしっかりと確保しなくてはならない。 マスクの保持と同時に気道を確保するのは意外に難しい。
基本は写真1.5のとおりであり、片手で下顎引き出し法を行いつつマスクを保持する。
手の小さな人では両方をいっぺんにやるのは難しい。マスクの保持が難しいときには、 術者の顎をマスクに当てて、顔面とマスクとの密着をはかるか、 マスクの保持とバッグもみを2人がかりで行うとうまくいく。
バッグ=マスクによる換気が正しく行われると、600ml近くの空気が肺内に入る。胸郭が5cmぐらい上昇する。 胸郭の動きが外からわからないような換気では意味が無く、上手な人がマスク換気を行えば、 そのまま全身麻酔の手術もできる1.1。
アンビューバッグを用いた換気はマスクの保持が難しく、また胃内に空気が入ってしまい、誤嚥を生じる可能性がある。
また、バッグ押して換気する方法には以下のような欠点もある。
これらはアンビューバッグの操作に慣れることで回避できる問題ではあるが、 こうした欠点を解消できる可能性のある、新しいアンビューバッグが提案されている(図1.7)。
この方法により、従来のアンビューバッグに比べて以下のような利点が生じる。
この新型のマスクは、従来のアンビューバッグと同様、バッグを押しての換気もでき、リザーバーバッグを使用することで、 100% 酸素の投与も可能であるという。