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2009.07.05

ルールを解説してほしい

ニュース番組が、最近はもう政治一色で、自民党のやりかたがけしからんだとか、今こそ政権交代をだとか、 ニュースキャスターや、政治評論家の人は、どのチャンネルをつけても同じことばっかり繰り返す。

たとえば将棋番組の解説者みたいな、その状況を、素人目にも面白く解説してくれるような、 政治番組の世界にも「解説者」に相当する職種を用意して、「評論家」とは別に、「解説者」の 談話を報道する番組ができたら、ニュースは今まで以上に面白くなるような気がする。

政治というルール

政治家の人はもちろん、「国益」のために、「有権者の皆さん」に政策を考えるのがお仕事だけれど、 「政治というゲーム」には、もちろんいろんなルールがある。

政策を考えることだとか、地元の有権者に、自らの考えかたを分かりやすく説明することというのは、 あれは政治というゲームにおいては「技」に相当するものであって、ルールとは違う。たとえば政治家が、 地元に帰ってお金をばらまいてみせたりしたら、それは「ルール違反」であって、その政治家は、 政治というゲームから、追放されてしまう。

「政治というゲーム」に参加する人が目標にするのは、議会という舞台に、選挙を勝ち抜いて、 そこに立ち続けることであって、政策の考案だとか、政治力の行使だとか、それは単なる戦略、 たくさんある技の一つに過ぎない。「すばらしい政策を考案すること」や「地元有権者と宴会を開くこと」、 あるいは「地元有力者に土下座すること」といった様々なやりかたには、ルールの前に等しい価値を持って、 どれが優れているとか、ましてやどれが「正しい」とか、それを評論家が論じたり、 憤ったりしてみせるのは、どこかおかしい。

政治番組というゲーム

ニュースキャスターが「お茶の間の意見を代弁してみせる」形式はもう出尽くして、 チャンネルごとの差なんて無いに等しいから、こんどはそろそろ、「政治というゲーム」を解説する、 様々な陰謀だとか、戦略を仕掛ける側の思惑を代弁するようなニュース番組を見てみたいなと思う。

今のニュース番組は、「政治家は基本的に真実を述べていて、ニュースキャスターは、 国民の思いを代弁する」という建前で作られているけれど、「政治家はそれぞれの立場を最善にするよう、常に小さな嘘をつくき、報道機関はそれを編集して、面白さを最大化するように加工する」という、報道番組本来のルールに基づいて、 それを技術論として解説する、政治の意図だとか、政治家の主張については、あえて一切介入しない番組を作ってほしい。

政治家の人は、政治というゲームに勝ち抜くために様々な技を考えるし、マスメディアの人たちもまた、 たとえば「ニュース番組というゲーム」に勝ち抜くために、政治家の振る舞いを、なるべく「面白く」しようと、 あれこれ思惑を巡らす。2つのゲーム、2つのルールが重なった結果として、たとえば「政治番組というゲーム」が 生まれて、政治評論家を名乗る人は、そういう状況を解説するのでなく、むしろひたすら盛り上げて、 あの人たちもたぶん、「政治評論家というゲーム」を、自分たちなりのやりかたで戦っているのだと思う。

戦いそれ自体よりも、むしろ「解説」を聞いてみたい。

「この状況でのこのコメントは、世論を誘導するのにあとから効くんですよね」だとか、 「この話題のかわしかたは、たぶん電通パブリックリレーションズのやりかたですね」とか、 あるいは「これは上手な編集ですね。このあとに出てくる笑顔がカットされることで、 この政治家のイメージはこれで一気に悪くなりました」だとか。

解説されると冷静になる

「○○党は○国の手先だ」みたいな陰謀論というのは、たぶん「ない」というのが正解なんだろうけれど、 政治家は政治の舞台に立ち続けないといけないし、ニュース番組を作る人だって、限られた時間で、 限られた予算で、撮影された映像を、可能な限り「面白く」報道しないと、視聴率競争に負けて、 最終的に、ニュース番組という舞台にいられなくなってしまう。

「真実を伝えること」なんて、それは「面白さ」という、報道というゲームを支配するルールから見れば、 プレイヤーが選択できる「技」の一つに過ぎないし、「真実」が、残念ながら「面白さ」を獲得するための 戦略として、事実上機能しない、「真実を伝えよ」なんて騒ぐ人たちが、真実の報道に対して、 何ら対価を支払わなくなったからこそ、「真実を報道する番組」が無くなってしまったのだと思う。

違ったルールで戦っているプレイヤーに対して、「真実の報道していない」なんて叩くのは、 総合格闘技を戦っている選手に対して、「相手を蹴るのは男らしくない」なんて、 観客が文句をいうようなもので、選手にしてみれば困ってしまうと思う。

ニュースというのは、そもそもが編集されて、「面白く」加工されるのがルールなのだから、 ルール自体を解説して、可視化する番組があったら、きっとみんな冷静になれる。

道路の報道なんかで、議員の人が、明らかに無駄っぽい道路を「これは必要なものだと思います」なんて答弁する。 それに対して「あいつは何を言っているんだ」なんて、政治評論家の人が、国民の声を代弁して、政治家を叩く。

こういうのは、政治の人は政治というルールを、政治評論家の人は、政治番組というルールを、それぞれ 戦っているのであって、その戦いを「解説」してくれる人が、今のニュース番組には、欠けているような気がする。

叩かれれば、みんな憤って盛り上がるけれど、物事はそんなに変わらない。この番組を、 たとえば「あの答弁で、彼はこの冬の秘書の給与が払えますね。あの事務所は最近人増やしたから、 今大変なんですよね」だとか、「今の叩きかたは切れ味十分でしたが、最後に口元が綻んでしまった絵を 報道されてしまったのは、彼の立場を難しくしたかもしれませんね」だとか、政治の楽しみかた、 ニュース番組の見どころを、「解説」してくれる番組があれば、みんなもっと、 今の状況を楽しめる。

政治だとか、ニュース番組だとか、あれだけのお金をかけて、たくさんの「役者」が舞台に登場して、 「真実」に、それぞれの思惑を投影して、そこから切り取った「絵」をさらに面白く加工して、 みんな生き残りをかけて、いくつもの複雑な技術が生み出されては、毎日のように覇を競う、 あの光景を見て、あれを憤りの感情一択で消費してしまうのは、あまりにももったいないと思う。

Comment & Trackback

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岩田先生曰く。
「アメリカの新聞を読めば謎が解け、日本の新聞を読むと謎が深まる」
http://georgebest1969.cocolog-nifty.com/blog/2009/06/post-8eee.html

マスコミに説明する気などないでしょう。

着眼点はおもしろいです。世の中の構造が、分かっておもしろそうです。

ただ、むしろ私は、「ルール」は「政策を訴えること」「選挙買収しない」とかいうことであって、このコラムで「ルール」と言われているものは「技」のような気がします。言葉の定義の問題だけですが、なんか自分はこの方がしっくり来ます。。

ともすれば陰謀論に限られがちな「解説」を、もっとエンターテイメント方面に振ったら面白いのではないか、って話ですね。
非常に同感です。
偏らないように、複数人解説者用意する必要がありそうですね。ネットの政治系論客と、元政治家秘書と、元官僚と……学者とTV局で報道番組のプロデューサーをやってた人あたりまで揃えられれば、非常に面白くなりそうです。
「行列のできる政治解説所」ってところでしょうか。

激しく同意です。僕もそういう解説こそ面白いと思うし、聞きたいです。ただ、現実にそういう解説者がいないのは、すべての人は政治ゲームの「完全な観客」ではありえず、多少なりとも「ゲームの勝敗に影響されてしまう」からだと思います。まして、政治ゲームのルールを解説できる程の人であれば、自分の発言(解説)が、政治ゲーム上で自分自身にどのような意味を持つのか分かるし、それを聞く者も、解説者自身が「分かって」発言していることが分かってしまう。アメリカのマスコミをみた方が分かるというのは、彼らはまさに「日本の政治ゲームの観客」だからだと思います。とは言うものの、繰り返しになりますが、そういう解説こそ見てみたいです。
あと、本質的な問題ではないですが、「ゲーム」という単語に否定的な反応を示す人がまだ少なくないような気がしていて、それも問題かも。

今回のテーマは特にムチャオモロかったです。
ただ、きちんと事実を冷静に掘り下げて、中身のある番組にする、って実は一番実力が必要とされ難しいんですよね。。。それをわかりやすく翻訳しようものならもう神業!!!!
事実考証抜きで感情論を振り乱すよ方がそりゃずっと簡単でしょう。
将棋や囲碁の解説ってやつも、解説者が競技者としての実力がかなりありかつ解説するトレーニングもしているので成立するわけで、政治の世界でそういった人材がいったいどれだけいるものか。。。
すみません、ネガティブなことばかり書いてしまって。でも、実現したらすんごく面白いニュース番組になるだろうな、と思います(ちなみにその司会者は大竹まことを希望:ま、そんなキャスティングは無理か。。。)。

2ちゃん(のまとめサイト)がその役割を果たしている分野がありますね。(東亜+とか) 浅いコメント群の中に深いコメントがあったりします。
解説は、解説をする人の立ち位置によって解説の聞き方が変わってくるので、解説の解説も楽しいかもですね。

こういう解説を、リアルタイムで鑑賞できたら、きっと面白いと思うのです。。

極東板とか軍板の奥には、たしかにものすごい人がいるのですが、そこにたどり着くまでが大変なんですよね。。

>>極東板とか軍板の奥には、たしかにものすごい人がいるのですが

こういう人の話を楽しむにも、仮にその人が話し上手だとしても、それなりの知性を要求される訳でして。。。
なので、視聴率を取るのは、おそらく難しいと思います。ただ、視聴率以外のテレビの客観的な価値基準が出てくれば可能性があるのかも??