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2009.05.20

「グダグダ」駆動型の問題解決手法

政府が「まだ感染の拡大を阻止する時期だ」なんていう立場を崩していない中、大阪と神戸の人たちは、「もう感染は蔓延しているから、発熱外来に患者さんを集中させても意味がない」、という認識を表明して、「蔓延期」のやりかたに舵を切った。

恐らくこれからは、全ての一般病院で通常の診察が始まって、タミフルだとか、検査キットだとか、今まで流通が止まっていた道具が解禁されて、あのエリアは落ち着きを取り戻すんだろう。

新型インフルエンザが、弱毒のまま経過していく、という前提が崩れない限り、神戸や大阪の人たちがやろうとしていること、あるいは、大阪の橋本府知事が最初から言っていたような、「そんなに重たく考えるのを止めよう」という立場が正しくて、そっちのほうがお金がかからないから、他の県もこれから、神戸や大阪に続くのだと思う。

グダグダではあったけれど、結果として日本は、だいたい1週間ぐらいの経過で、世界レベルの、常識的なやりかたに軟着陸しつつある。

方法論として総括するなら、これはもう、リーダーの失政であって、ここまでに至る過程は「最悪」の一言だったけれど、課程の評価をすっ飛ばしていいのなら、「外国に右にならえ」をするわけでなく、地域ごとの試行錯誤を促した帰結として、ボトムアップのやりかたで世界レベルの解答にたどり着いた、と解釈してもいいのなら、「グダグダ駆動」の問題解決というのは、案外「あり」なんじゃないかなと思った。

「グダグダ」を成功させるのにも、必要な条件というものがある。

  • 上層部は、誰もが認める「無能」でなくてはならない。上司が中途半端に有能だと、現場はその人の判断を待って、 自ら動こうとする動機を失ってしまう
  • しかたがねぇな」という空気がアイデアを生む。今の時代、失敗のコストが圧倒的に高くなってしまうのは、たぶん全世界共通で、今更これを変えるのは無理。その代わり、「上司が無能で、組織が傾く」という、有事というエクスキューズが入ったのなら、失敗コストをそのときだけ下げることができる
  • 上司の役割は、だから「無能な上司それ自体が有事」という空気を作りだすことにあって、上層部から、積極的にグダグダ感を発信して、一刻も早く、現場に「有事」の空気を生まないと、グダグダ駆動はうまくいかない
  • 問題を解決するための資源を最初から分散しておかないといけない。タミフルだとか、検査キットは、県のレベルで流通を管理できたから、今回は、アイデアが生まれた。これがたとえば自衛隊管理だとか、国家管理だったなら、知事にできることといえば、国にお祈りするか、クーデターを起こすことぐらいだった
  • 問題の大きさを、知事だとか、市長だとか、「手に負える」大きさに切り分けて、兵站まで含めて、現場に「丸投げ」してしまわないと、「グダグダ」は生まれない
  • 制約要素をあらかじめ宣言しておくと、それが多様性を生み出すかもしれない。今回の事例では、財務省の人たちが、「対策にはビタ一文出す必要を感じない」なんて宣言した。これがもしも「予算も物資も天井知らずだ」なんて宣言だったら、たぶん単なる予算獲得競争になって、アイデアは、問題解決の方向を向かなかったかもしれない
  • 政府の人たちがもしももう少し責任意識が強かったなら、薬品なんかを「国家備蓄」にして、いざというときには我々が積極的に管理します、なんて立場を表明していたのなら、今回のような、「我々は勝手にやる」空気は、そもそも生まれなかった
  • 比較可能な「ものさし」を決めないといけない。今回の状況で行くならば、それは「予算」であって、「外来の待ち時間」だった
  • 発熱外来を運営するのにはお金がかかって、企業や学校の運営停止命令は、経済的なダメージがすごかった。大阪や、神戸の決断は、少なくとも「お金がかからない」だとか、外来の「待ち時間が減る」といった、比較可能な効果をもたらすはず
  • ここで「ものさし」が不在になってしまうと、たとえば舛添大臣が提案している「犠牲者ゼロ」なんてものさしは、これはインフルエンザの流行が終わってみないと、計測も、比較も不可能だから、「グダグダ駆動」ができない
  • 使えないものさしを提示されると、みんなは「汗の量」で、物事を評価する。役立たずでも、「一生懸命やった」ことが評価されてしまうし、有用な対策を打ち出したところで、それに要した「汗の量」が少なかったら、もしかしたらせっかく生まれた合理的なやりかたは、広まらない
  • 上層部は浅ましくないといけない。よさげなアイデアが生まれたら、さっさとそれを「自分の手柄」として自画自賛して、全国に広めないといけない
  • なまじっか上層部が謙虚で、そこで「よりよいやりかたを学ぼう」会議を主催したりすると、いい意味で場当たり的な、うまくいったやりかたは、「委員会」が生み出す鈍重な第2のシステム、牙を抜かれた、役立たずのものになりかねない

限界はあるだろうけれど、日本には、こういうのがあってるような気がする。

Comment & Trackback

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今回のインフル騒ぎで各自治体の力の差が見えたように思います

・神戸:阪神大震災以来、オカミをアテにしなくなった
・大阪府:さすがに知事は喧嘩慣れしていて、対応が速い
・大阪市:厚労省の指示待ちの場面もあったが総じてまあまあの対応

国という組織は、図体がでかいだけに、決断が遅い
こうなったら先行する神戸・大阪の状況をみて、後追いがよさそうです

しかし、新型インフルとの戦いは、入院患者の治療によく似ています

気の利いた方針を出すだけで患者を全くみないより、毎日ベッドサイドで悩みつつコマメに軌道修正する方が大きな間違いをしませんね

そういうのこそ 「グダグダ」 駆動型なのかも・・・

[...] 「グダグダ」駆動型の問題解決手法 – レジデント初期研修用資料 (tags: medical government society media) [...]

穿ちすぎかも知れませんが、舛添大臣は案外その辺わかった上でああ振る舞ってるようにも見えたり。

[...] 「グダグダ」駆動型の問題解決手法 – レジデント初期研修用資料 (tags: あとで読む) [...]

事実関係の表現が正確かどうかは疑問があります(*)が、一般論としては興味深いですね。このアングルの方が広まりやすいでしょうし、ブラックではありますが現場の士気もあがるのかもしれません。役人は、意外と言外に意図を含ませたり、「黙認」「ついうっかり見逃す」という手を使ったりもしますので、そのあたりの空気を読んで頂けると助かるときもあります。(逆に、正面切って聞かれると原理原則で応えざるを得ない、というときでもあります。)

(*)
・例えば、「財務省の人たちが、『対策にはビタ一文出す必要を感じない』なんて宣言した。」というのは正確ではありません。
新型インフルエンザは、これまでいつでも起こりうるという前提で計画をたて、予算措置をしてきたものであり、既に21年度当初予算でも予算は措置されています。これらとは別に、しかも他の補正予算等とは別に予備費等から急遽支出を行うということは、これまで予算編成の段階では思いも寄らなかった青天の霹靂(行政の現場ではよく冗談で「火星人が襲来したら」とか言います)が起こった、ということを意味しますが、そういう状況ではないという認識を示したのが次官発言です。新型インフルエンザにリソースゼロで臨むとは言っていませんし、「状況に応じて、必要な措置は当然講じていく」(18日財務次官会見)、と至極まっとうなことを言っています。
こういう表現が独り歩きして、結果として物事がうまくいくのであればいいとも思いますが、先生方が居もしないオバケに悪態をつくのに時間を使ってしまうのはもったいないし、我々も誤解されたままなのは気持ちよくありませんので、何とか解きほぐせるとよいなとも思います。

・4ポツや5ポツでは、たまたまの状況を利用して、地方自治体がスタンドプレーを行ったように読めますが、そもそも、新型インフルエンザ対策の実施の部分については、計画段階から都道府県にかなりの裁量があったはずです。(計画している段階で、都道府県庁や保健所からの声が入っていたのかもしれません。)また、地方に詳細の対応を任せることは、「丸投げ」ではなく「画一的にならない、地域の実情に応じた弾力的な対応を可能にする施策」と呼びます。霞ヶ関にいながらにして全国津々浦々の事情が分かるほど人間賢くはありませんので、よくある対応です。

・まあ、こういうコメント自体、12ポツ目や13ポツ目だと言われるかもしれない、という意味で、この記事、オチがついていますね。

・ところで、10ポツ目の舛添大臣提案のソースを教えて頂くことは可能ですか?

なんだかんだいっても発信した情報の一言一句にケチを付けられるんだから、国の中の人も大変ですよね。ちゃんと毎日、うちに帰れたのでしょうか。

対策にはビタ一文出す必要を感じない→対策にはこれ以上ビタ一文出す必要を感じない

国の動きが遅いのは、突発的な事態じゃなくて、対応できることになっているはずの事態だからか。。。

「グダグダ駆動」の限界は、一番杜撰な自治体が日本の防疫態勢を決めてしまう、ということでしょうかね。

OST(オープン・ソース・テクノロジー)

場とつながりラボ home’s viのお結び庵で借りてきて読む。

ミーティング手法というのだろうか。
考案者のハリソン・オーエンという人は、250人が参加するある国際会議の準備をして開…

組織・プロジェクト進行を将軍-士官-兵隊ミリタリー型<のみ>メタファーで運用していくことの不完全性、といったところでしょうか。あるいは伽藍とバザール。

国民のお上=権威すき好き大好きでも大嫌いが炙り出しされているような気も。

自由な市場が問題を解決する←→ぐだぐだ駆動

経世済民的複雑系問題の解決法
 計画主義社会主義規制主義エリート主義←→ぐだぐだ駆動

厚生労働省が動かせる(直接指揮権の及ぶ)手駒で詰め将棋を解いた結果が、成田空港での宇宙服という画づらになって立ち現れたような

どこかでありそうな風景を呼ぶインセンティブ
”ここでインフルAを出したら負け(○○的な意味で)”→”あんまり可能性も高くありませんし、検査キットも数限られてますから、あなたは熱出てますけどインフルエンザの検査はしなくていいですよ”

モラルハザードというのが適切かどうかは別として