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2008.04.28

リソース分配のこと

子供の外傷とか、あるいは溺水とか。連休は「不慮の事故」で運ばれる子供が増える。 今年は休日当直。今から怖がってる。

うちの地域はまだ、かろうじて救急輪番制が機能しているけれど、 崩壊する一歩手前。救急当番を回せてるのは実質3 病院だけだし、 地域でそれなりの数を受けているうちだって「救急指定」だけれど、 全科一人当直。小児科の専門医は、もちろん待機していない。

手に負えないお子さんが来たときは、だから小児科の常勤が待機している病院に 運ぶんだけれど、今県内全域で機能している小児科は、せいぜい3施設ぐらい。 救急を夜間に受けてくれる施設はもっと少ない。ベッドはどこもいっぱい。 この連休も、どうなるか分からない。

死亡率のこと

日本ではなんだか、ゼロ歳から1 歳までの死亡率は世界一低いのに、 1 歳から4 歳までの死亡率がとたんに悪くなって、世界でも下位のグループに 転落するなんて、ニュースで報じられていた。

「そんなはずはない」なんてtwitter でしゃべってたら、 人口動態統計というものを 教えていただいた。

1 歳未満の死亡原因には「先天異常」が最も多い。1 歳以上4 歳未満、 ニュースで報じられていた、日本の小児死亡率が悪くなってしまう年齢層だと、 「不慮の事故」が死亡原因のトップ。 死亡原因の2位、不慮の事故に迫る勢いで多いのは、やはり先天異常の子供さん。

新生児医療に従事する先生がたは、本当にがんばってる。病院に泊まり込みで働くのは、 もはや「前提」になっていて、当直ルールはもちろんあるんだろうけれど、 集中治療室から新生児室に電話入れると、夜中でも普通にみんないる。

大学病院には新生児用の集中治療室があって、子供さんはほとんどみんな、 人工呼吸器が必要だったり、保育器から出せなかったり。 誰かがずっと貼り付いていないと、すぐに状態が悪くなる。

みんな帰らないで頑張ってる。頑張ったからこそ、先天異常を抱えたお子さんは、 日本では「1年」を乗り切れて、それでもやはり障害は重いから、4 年を超えるのは難しいのだと思う。 実際比べたわけではないけれど、先天異常の子供というのは、海外だともっと早期に亡くなってしまって、 そもそもたぶん、1年以上生きること自体が少ない。日本の小児死亡率はだから、1歳未満が 極端に低くて、その次の3年間で悪化してしまうのだと思う。

それでも医師は足りない

小児専門の医療センターは、日本にだっていくつもある。うちの県にもある。

ところがそんな病院は、いつ問い合わせても「満床」。 急患の入院だとか、夜間の診察依頼だとか、お願いしても難しい。

専門センターのベッドは、もう何年も前から埋まりっぱなし。 稼働しているベッドの数は常に1 ケタ。病院の規模自体は、もっと はるかに大きいんだけれど、動かせる患者さんはいないから、急患に対応できない。

小児センターには、そのセンターで生まれて、そのセンターで育って、 専門医が貼り付くことを止めたら、たぶん亡くなってしまうような子供さんがたくさん入院している。

たぶんどこの県でも同じなんだろうけれど、小児の専門施設は、 重篤な先天性疾患のお子さんで、常に満床に近い状態で動いていて、 小児救急とか、他の「重症」にマンパワーを回す余地が残っていない。

専門医の数は限られてて、使える設備も限られている現状で、どういうわけだか、 小児医療に対する補助金ばっかりが増やされた。小児の急患は「無料」で いいことになって、夜中の救急外来には、元気にはしゃぐ子供が増えた。

機会の公平と結果の平等

「生まれてからずっと重症であり続けるお子さん」と、 「昨日まで元気で、今重症になったお子さん」とがいる。

現場回してる小児科医師は限られていて、小児科医療の無料化で、 外来に来る元気なお子さんは、たぶんこれからますます増える。

アメリカは機会の平等を目指した国。子供の医療は割り切られていて、 重篤な先天性疾患のお子さんなんかは、一定以上の治療は行わないらしい。 医療費がものすごく高いから、実際問題、支払いができる親御さんもいないのだろうけれど。

日本はどちらかというと「結果の平等」目指してて、それでも今までどうにかなった。 その代わり、建前「平等」だからこそ、重たい子供に割かれるリソースが増えるほどに、 「平等」の要求水準は高まって、医師の数はあっという間に足りなくなる。

「結果の平等」目指すなら、全ての子供に総合病院を用意しないと、「平等」は実現できない。 今現在、そんな医療を受けているお子さんがいる一方で、そんな医療が必要で、 それを手に入れることができないお子さんが発生しているわけだから。

長野県だったか、小児の専門施設が、救急医療に参加すべきか否かでずいぶん揺れた。 入院しているお子さんのお母さん達が救急参加に反対してて、急患を引き受けるようになったら、 入院患児の介護が薄くなるなんて懸念を表明してた。

連休直前。これから入院が一気に増えるから、それに備えて、何とか帰れそうな人は、 ご家族説得してみんな帰す。高齢の患者さんとか、娘さんが一人で介護してるご家庭とか、 「弱そうな」人からとにかく帰す。

「うちでは看れません」なんて、お話しする前から宣言するご家族もいる。「強い」人達。 30分も話してやっと説得できて、「連休開けたら考えてもいいです」なんて、了解をいただく。

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Comment & Trackback

アメリカで交通事故、ICUに運ばれ虫の息。関係者に突きつけられたのは「いつ生命維持装置止めますか?」の判断。事故から十日ほどしてその人はお亡くなりに。海外旅行傷害保険だからできた贅沢。普通の会社員が加入する向こうの生保だったら1日、2日が限度。それ以上は自己破産への道まっしぐら。機会平等を補強する一例として。
”この譲り葉は新しい葉ができると、入り代つてふるい葉が落ちてしまふのです”譲られたことのない人は、滅多に人に譲らない。全ては自分の財布で賄う。早くからそう自覚すると振る舞いも自然と律される。そう思いたいんですけど。

>全ては自分の財布で賄う
シンガポールなんかは、まさにこのルールで回してますよね。。
若い頃から強制的に積立貯金に加入して、そのお金が、自分が一生涯に使える医療費になるという。

そろそろ、冷静・冷徹な議論が必要になってきている時期なのでしょうね。無邪気に「結果の平等」を求めていく時代は、技術の進歩、それに伴うコストの増加が原因で終焉を迎えつつあるのでしょうから。

それから、ひどく冷たい疑問なんですが、1年後に亡くなってしまう子供のために、命を削って病院に泊り込んで、ずっと保育器に張り付いている小児科の先生方って、モチベーションを保てるものなのでしょうか?
(自分なら半年持たない気がします)

みんな殉教者の顔してます>新生児チームの人達

コンコルドの誤謬(これ以上資本を投入してもいいことないのに、今まで巨額に投資済んでるから続ける)とか、損失回避(手元にある10ドルを失うのと20ドル手に入れるチャンスを失うの比較)、保有効果(20ドルで買ったワイン、今買うと100ドルです。売りますか、さらに値上がりすると思ってるのなら売らないのはわかりますが、もう一本買わないのは何故ですか)とか。
JFKさんへ。
なんとなくわかる気がしますよ>モチベーション
こういったらなんですが、困難にチャレンジすること事態がモチベーションになるという。
ギャンブル、釣り、ボトルシップ、慢性完全閉塞症例。
特殊な海生生物の長期飼育記録。低出生体重のインタクトサバイブ。20手詰の詰め将棋。日本最高齢手術。

その先に何かがあると信じていれば、その先にあるのが何であっても構わない?

結局、命の重さと値段を数値を出して図ることなんでしょうね。誰かが。

JFKさま
そんなこといったら、小児移植医療やってる先生方、神様ですよ。自分の欲求も時間も、全てを捨てて、生きていらっしゃる。
例えて言えば、未開の地に布教する宣教師みたいなものですか。運が悪いと十字架にくくりつけられて、滝壺に落とされますけど。

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