2008.12.08
「どこでも同じ治療が受けられる」不幸
NHKスペシャル「がん難民」を見た感想。
がん治療の専門医制度が出来て、今は日本中どこに行っても、ガイドラインに従った、 同じような治療が受けられるようになった(->コメント欄にて「まだまだそんなことはない」という指摘をいただきました)のだけれど、 「同じ」によって、むしろ幸せから遠ざかってる人が取材されてた。
薬の効かない人
化学療法を行ったけれど、十分な効果が得られなかった患者さん。 恐らくは切り出した組織を使った「抗がん剤の感受性検査」を受けて、「効く薬がありません」なんて、 主治医から宣告されてた。
今のがん対策基本法だと、治療の効果が得られない患者さんに残された選択枝は「ターミナルケア」なんだけれど、 その人はそんな結論に納得できなくて、そこからいろんな病院を探していた。
番組が作られた県内には、5つから10ぐらいの「がん拠点病院」という指定を受けた施設があるみたいだけれど、 その患者さんは、いくつもの拠点病院を回って、やっぱり「効果が薄いと思います」なんて説明を受けて、 6つめだかの拠点病院の外来で、はじめて「あるいは治療可能かも」なんて医師と出会って、 化学療法を受けていた。
番組では、その患者さんの満足度は高そうだったけれど、通院には時間がかかって、大変そうだった。
「同じ」は幸福につながらない
証拠に基づいた治療のガイドラインにしても、専門医制度にしても、あるいはがん拠点病院制度にしても、 こういう制度が目指しているのは、「日本中どこに行っても同じ質の治療が受けられる」世の中。
それはもちろん正しいありかただし、質を揃えることで、結果として多くの患者さんが、よりよい 治療を受けられるはずなんだけれど、取材を受けていた患者さんについては、 あるいは、医師から宣告された「結果」を受け入れることが出来ない多くの人にとっては、 「同じ」というありかたは、幸福につながらない。
「治療の効果は得られないと思います」なんて、正しくて、同じ答えを聞いたところで、 その患者さんの満足度は上がらない。
「同じ」を目指す、証拠に基づいた医療だとか、がん対策基本法みたいな制度は、 こうした患者さんから、逃げ場というか、すがる先というか、 選択枝みたいなものを奪ってしまって、結果としてそれは、こういう人達を不幸にしてしまっているように見えた。
代替医療はなくならない
恐らくは6つめの拠点病院の医師にしたところで、その人だけが知っている、 「効く」化学療法なんてものがあったわけではなくて、むしろそんなやりかたは、 ガイドラインから外れた、あるいはもしかしたら、論文上は「効果が薄い」なんて結論の出ている やりかたなのだろうなと思う。ガイドラインに従った他の専門家は、みんな同じく、その人には「効く薬がない」なんて 結論にたどり着いていたわけなんだから。
ガイドラインだとか、拠点病院が整備されて、たぶん日本のがん治療の水準は上がるんだとは思う。
医療の水準がどれだけ向上したところで、アガリクスだとか、波動水だとか、 そういう怪しげな治療が活躍する場面は、減るどころか、むしろこれからますます盛んになっていく。
専門化が進んで、逆に「その人に出来ること」が差別化できなくなった近未来には、 「専門家を見捨てた」患者さんが、ニンニク注射だとか、血液クレンジングだとか、 怪しい治療を行う外来に列なしたりするんだろうなとか、番組見ていてそんなことを思った。
がんの専門医ですが、、、「どこでもいっしょ」なんて嘘ですよ。あまりにも格差は大きいです。テレビ見てないのでどこの話かは分からないですが、感受性試験?! いまだこんなものをやっている施設もまだあるんですよねぇ。。。。
話は、ずれますが、がん治療っているのは、あるいみ緊急性はないことが多くて自分の先を考えてしまう時間を作られるのが普通の病気と違うところですね。事故や脳卒中のような一気に起こる病気と違って病気で弱っていく自分の姿を想像させられる真綿で首を絞められるようなつらさがあるかもしれません。だから、自分に一番都合のいい医者を捜しに奔走するのです。
本当の意味のがん難民もいますが、半分以上は難民もどきで、甘い言葉をかけてくれる人を探しているだけです。
私は、セカンドオピニオンなんかでは、やっぱりはっきり引導を渡すようにしています。それが専門医の役割と思っています。それでも、さまよっていく患者はいますが、余計なことに時間も金も使わないで残りの時間を無駄にして欲しくないから、、、時間と金が余っている人は、、、、さまよって生者に還元・散財していってくれてもいいんですけどね、、、、
Posted at 2008.12.8 9:53 PM by ひんべえ
どうやって死ぬのが幸せなのか迷います。多分死ぬのは不幸なことだから幸せにはどうやってもならないのだろうし、見苦しく死ぬしかないのかなとも思いますけど。ただ・・・、やっぱり疑似科学に基づく治療はどうやっても死に行く人を食い物にしているとしか思えないです。夢を売っている(与えてはいない)どこかのランドが進化したやつみたいなのはどうしても評価できないです。死ぬ直前まで裁判とかやっている人をみるとそれをそそのかした○○士はろくな死に方できないだろうとか思ってしまうのは歪んでいるんでしょうか。
Posted at 2008.12.9 12:58 AM by tomo
>「どこでもいっしょ」なんて嘘ですよ。
おお。。。がん治療については、今まで全く無縁でここまで来たので、正直「実際のところどうなのか」みたいな知識がないのです。
「自分に一番都合のいい医者を捜しに奔走する」のは全面同意。で、恐らくは専門知識を持った人ほど、「都合のいい」言葉がかけられなくなって、医療とは遠い人達のところに患者さんが集まる、と。。
夢を売る人達は、あるいはもしかしたら、それこそ「夢」売ってるわけなんだから、罪悪感薄いのかもしれないですね。。
Posted at 2008.12.9 8:11 AM by medtoolz
孤独で迷ってる癌患者の話し相手になってあげて、有料で慰めたり愚痴を聞いてあげる仕事とかこれから当たりそうな気がします。
専門家の面白くも可笑しくもない現実的な話を聞かされるよりも、若いコとどうでも良い話を愉しくするほうが、緩和と延命の効果ありそうです。
巷のキャバクラやホストクラブと変わりませんかねぇ。
Posted at 2008.12.9 2:31 PM by カイル
「時間」こそ、専門家が提供したくても絶対に提供できない商品の代表みたいなものですよね。。。
Posted at 2008.12.9 6:27 PM by medtoolz
医者が訴えられるからですよ。
ガイドラインどおりにやっていれば、訴えられても勝てますから。
どこでも同じ医療を受けたがったのも、また患者様だと思いますよ。
Posted at 2008.12.9 6:45 PM by Robin
癌治療にガイドラインなんて必要ないと思います。。
胃がんでは早期なら誰が切っても90パーセント以上の治癒が得られますが、数パーセントは早期でも死にます。。(ca. in ademona
で半年後に亡くなった方が複数人おります。。)
一方、stageIVでも何百人も診ていると、無治療でも「自然治癒」する患者さんもいます。。(大学にいた数年間でも2人自然治癒しました)
あと、どれだけ治療法が進歩しても、早期発見して治療してもなかなか「死亡率」は減らせず、最も関与しているのは「ピロリの感染率」だったりします。。ので、「胃がん患者数と死亡率低下」に最も寄与するのは「小児期のピロリ感染率の低下」なのですが、実践されておりません。
というより、「癌の死亡率低下」は「他の疾患での死亡率上昇」を意味しますので、マクロで見ると医療費は増加します。(ピロリ感染率が低下するとメタボが増える→血管疾患、DM、認知症などが増える→介護費用、透析費用などは癌治療よりも高コストですから)
僕の父親は肺がんで死にましたが、医療費は安く住みましたし、年金も貰わず、たばこ税はたくさん払っていましたから国から見ると理想的な国民ですね。。
スタンスによって、つまりミクロ経済かマクロ経済か。個人レベルか国家レベルか。どの視点でみるかによって最適解は異なると言えます。。
僕はタバコはやめましたが、、結果は死ぬときまで分かりませんね(^^;)DMで透析患者となり医療費をたくさん使って国に迷惑かけるかもしれません。
職業としては患者さんには「タバコはやめましょう」と言いますが「太ると結果的にお金がかかるし、将来的にQOLが低下する恐れや家族に負担がかかる恐れがあります」とも言っています。
Posted at 2008.12.9 7:31 PM by 黒猫
結局、自分の人生の責任は自分自身で取るべきであると考えます。。他人のせいにしちゃいけません(^^;) まして、国や政治家のせいにしてはいけませんね。
Posted at 2008.12.9 7:33 PM by 黒猫
[医療]がん医療
「どこでも同じ治療が受けられる」不幸 – レジデント初期研修用資料 コメント欄の 話は、ずれますが、がん治療っているのは、あるいみ緊急性はないことが多くて自分の先を考えてしま…
Posted at 2008.12.10 12:51 AM by へなちょこ内科医の日記(奴隷勤務日誌兼絶望日誌)
ぼくは、在宅や訪問診療も当然外来もやりますが、孤独で迷ってる癌患者、認知症患者(認知症老人?)、ただのメタボの老人、独居老人、独居の若者の話し相手になってあげて、慰めたり愚痴を聞いてあげることが、仕事の半分以上を占めると思っています。
みんな相談や雑談をする相手がいないから、くだらない症状でも受診するんでしょうね。しゃべらせて発散させて元気になるなら、それって全然素晴らしい仕事と思います。急性期病院勤務医とはだいぶ違う職種なんでしょうが、SSRIとかベンゾとかマイナーとかメジャーとかの処方権が必要だから、医者がやるしかないんでしょうね。
Posted at 2008.12.10 11:39 PM by たぬき
あ、ちなみに、しゃべりに来る患者さんの主訴は、感冒症状、頭痛、生活習慣病、痴呆ですよ。
Posted at 2008.12.10 11:42 PM by たぬき(私は内科医)
難しい問題。。
Posted at 2008.12.11 12:26 PM by medtoolz