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2008.09.25

見たいものしか見えなくなる

寝たきりの、普段から喀痰でうがいしているような患者さんを、老健施設から受ける。

そういう人は、どこから先が「病気」の範疇で、どこから先がそうでないのかはっきりしない。 熱が出て、呼吸が悪くなったら病院で受けて、なんとか立ち直って、熱が下がったら、また老健に戻る。

入院期間はどうしたって長引くし、老健施設だって、こういう人を介護するのには人手かかかるから、 「ある程度落ち着きました」なんて紹介状の返事書いても、施設によっては無視される。

問題は秘書のせい

寝たきりの人を引き受けて、介護するのが思ったより大変だったのか、 「本人が貴院での入院加療を希望しておられます」なんて、しゃべれもしない老人を紹介してくる。 地元の開業医が施設長を兼任してる。

外来に来て、そんなに具合が悪いわけでもないのに、気がつくとスタッフはみんな引き上げてる。 北朝鮮の瀬戸際外交されてる気分になる。

とりあえず部屋取って、点滴して、ある程度落ち着いて、また紹介状書く。 「先生におかれましてはお忙しい中大変申し訳ありませんが、患者様の今後のご加療をよろしくお願いします。 このたびは貴重な患者様をご紹介いただき、本当にありがとうございました」なんて。

無視される。1 週間待っても、2 週間待っても、「今検討中です」なんて、患者さん見にも来ないで、 なんか検討してる。

そうこうしているうちに別の患者さんが「紹介」されて、また「本人が貴院での…」なんて、 しゃべれない老人を、車いすに乗っけて連れてくる。

やりかたがあんまりひどくて、文句言う。「もう病棟残ってませんから。○○さん 引き取ってくれないと、次受けられませんから」なんて。むこうのスタッフはひたすら困ってる。 「施設長の方針で、その人受けられないんです」だって。

話が前に進まないから、施設長その人に、コンタクトを取ってもらう。

施設長は、たいてい席を外していて、 「連絡取れるまで、電話切らないで待ってますから」なんて応酬すると、ようやくしばらくして、 「あとから連絡するとのことです」なんて話になる。

年次が上の同業者。喧嘩になるの覚悟して電話を待ってると、 「うちのスタッフが失礼しました」なんて、和やかな返事。自分たちの施設では、 病院が大丈夫と判断した患者さんについては速やかに引き取ることを目標としていて、 対応が遅いのも、患者さん引き取らないのも、全てはスタッフが勝手にやったことなんだと。

「よく言い聞かせておきます」なんて電話が切れて、患者さんが引き取られて、 また別の人が紹介されて、やっぱりその患者さんも、いつまでたっても引き取られない。

文句言って、また同じスタッフの人が「勝手にやったこと」にされて、患者さんは引き取られていく。

「医師同士はお互い仲がいい」という世界観は、あの人達にはすごく大事なものみたい。

医師会の会合のこと

地域医療連携の集まりだか、医師会主催の講演会があった。

終わったあとに立食パーティーがあって、友達いないから一人で食べてたら、 「いつもどうもありがとう」なんて、年配の先生方が何人かやってきた。 いつもどうしようもない患者さんを、どうしようもない理由で送りつけてくる人達。

「君たちの施設も、我々がたくさん患者を紹介するからうれしいだろう」とか、 「他の公立病院が撤退してきて、君たちももっと忙しくなる。これから大変だろうけれど、 医師の数はもっと増えるんだろうから頑張ってくれたまえ」だとか。

みんなにこやかだった。集まった人達は、「勤務医は開業医の息子」だなんて思ってて、 息子はもちろん死ぬほど働いて、「親」の金儲けを喜んで支えるのが孝行だなんて、どうも本気で信じてた。

何を言っているのか分からないだろうし、自分も何を言われているのか分からなかった。 嫌味だとか皮肉だとか、そんなチャチなもんじゃない、もっと恐ろしいものの片鱗を味わった。

当たり前の話、紹介されたってうれしくないし、ベッドだっていつもいっぱい。 医師が増える話なんて無いし、一人当直の病院なんだから、今以上に患者さんが殺到したとして、 対応できるわけがない。

「頑張れないと思います」とか返事したら、自分たちの施設では設備が足りないだとか、 開業医は当直が出来ないだとか、「親には逆らうもんじゃない」みたいなコメントが返ってきた。

設備は買えばいいし、心配だったら自分で当直すればいい。患者さんの具合が悪くなっても、 その施設はいつも、患者さんをろくすっぽ診もしないで、、限界まで悪くしてからぶん投げるんだから、 患者さんの具合が悪くなって立場を失うのはその先生であって、自分たちじゃない。

「夜中に患者さんの具合が悪くなったら、君たちだって同じ医師として心配だろう? 」なんて言うから、 「だって先生、ボク達普段から仲悪いじゃないですか」とか言葉返したら、 なんだか異星生物見るような目でにらまれて、みんないなくなった。

また一人になって、お寿司いただいて帰った。

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Comment & Trackback

「さすがmedtoolz !俺達に出来ないことを平然とやってのけるッ!そこにシビれる!あこがれるゥ!」

 とても共感します。
 私の場合は同経営グループ内の老犬から送られてきます。「40度の熱発を数日経過を見ていました(本当に何もしないでただ見ていただけ)」で重症肺炎+心不全とか、「大声を出して医療者が困るので抗精神病薬を処方したら急に動かなくなって喋らなくなりました。数日経過を見ていたら全身に褥瘡が出現しました」で肺炎+難治性褥瘡とか、「尿を目視したら濁っておらず、胸部の聴診でラ音がないので、尿路感染症と肺炎は否定できますが経過を見ていても熱が下がりません」といって紹介されたらバリバリの肺炎+腎盂腎炎とか。なぜ何もしないのか理由を聞くと「経費削減のため」だそうです。

自分の代わりなぞ無限にいる、と日々痛感している人間の暴言です。トビずれでしょうか、その場合は消去願います。
今は、人の生命に価値がない時代なのでしょう。だって代わりはいくらでもいるのだから。自分の妻子に何事かあったら私は死にもの狂いで頑張りますが、どこか遠い外国で1億人死んでも、多分平然としている。だって1億人なんて1年4ヶ月あれば補充されるのだから。そして補充されることで世界の資源はますます乏しくなり環境破壊が進むのだから。無茶な時代に生きているのだと思わずにはいられません。
人の生命は貴重だ、と素直に信じることができた世代と、世界の有限性を暗黙のうちに圧迫感として感じている世代の間には絶望的な差があると最近思います。

いつも興味深く、楽しく拝見させていただいていますが、初めてコメント致します。
先生の気苦労は痛いほどわかるつもりですが、どうか些細なことで敵をお作りになりませんようお願いします。
先生のような方が閉鎖的で陰険な人間社会に抹殺されるのは見ていられません。

あ〜、この孤独感、よくわかります。一人ぼっちの立食パティーにも慣れましたけどね・・・。同じ業界の人達であるはずなのに、まったくの異星人のような方々と話している感じですよね。実に不思議な業界です。後何年かすればこんな見方しかできなくなってしまうのでしょうか?そうはなりたくないのですが・・・(^^;;

medtoolzさんお疲れ様です。

老健と病院の往復になったら、看取りですかね。
だって、まったく病院から出られないのですから。
僕だったら看取ります。
実は急性期病院のひとつの役割かもしれません。

まったく同様の状況で大喧嘩した小生が言いますmedt00lz先生は、3年後、現在の施設に存在しないでしょう。

奴らが、悪化した患者さんを診れる訳がありません。技術も経験も設備もないから。
奴らは、空いたベッドにさっさと次の患者を入れます。経営第一だから。
奴らは、勤務医が在院日数短縮や病床回転の為にどれほど血を流しているか、理解できないでしょう。その必要がないから。
奴らにとっては、勤務医なんて、いくらでも換えのある消耗品なのでしょう。現状に無自覚ですから。

かくして地域医療は崩壊するのです。

コメントにしては、少々言葉が過ぎたかもしれません。お許しください。

大規模病院の救急部長から老健施設に横滑りし、救急病院が絶対にやって欲しくないことを水際で食い止めてるように見える医師なんかも、この人たちからは「見えない」存在なのでしょう。上記のような医師は、高齢化がより深刻な社会問題となっている地域で何かの先例を作る・今ある醜悪な構図を引っ繰りかえそうとしているように思います。そうした連携が進んだ時あぶれるのは誰か。そこまで見えていて「見えない」ふりをし、全力で勝ち逃げ体勢に入られたら堪らないですね。

皆様コメントありがとうございます。。
それが「世代」なのか「職種」なのか、やっぱり我々の業界にだって越えがたい断絶がどこかにあって、医療だって決して一枚岩じゃないわけで。。
それを「一緒に頑張ろう」なんていわれても、やっぱりなんか違うと思うのです。

お疲れ様です。
後期高齢者の重症は、よほど本人の頭と家族がしっかりした人以外は、すべて「お看取りコース」で良いんじゃないでしょうか?
私は外科系ということもありますが、手術適応でない紹介患者さんは卓球かバレーボールのように元の施設に問答無用でお返ししてますね。

厚生労働省は病床を2/3に減らすことを粛々と進めています。県内の病院でも倒産の危機にある病院がいくつもあります。その後は給料は今より減るかもしれませんが、staff数が増えて、精神的、体力的には楽になるはずです。その代償として、
開業医がクリニックに住み、夜間の1次救急を受け入れ、病院まで搬送するっていう事をしていただかないと。「かかりつけ医」が看取るという事が常識になるまでは混乱するでしょう。
介護施設や、救急医療、婦人科、小児科、などの不採算部門を公的機関が担うべきと思いますが、財源が無いですね、、、。

勤務医の立場として共感します

ただ、私の場合は、実感として
「老健」の代わりに「患者の自宅」、
「院長」の代わりに「患者の家族」、
のパターンが多いように思います。

老健院長、急性期病院勤務医、患者家族、
お互いに不信感をもっていますね。

結局、自分のパートを淡々と事務的にこなすのが1番いいのかもしれません。

サブプライム問題と同じで、相互不信が出てくると、膨らんでた何かが一気に縮みますよね。。
今まである程度うまく回っていたのも、あるいは「バブル」だったんですかね。。

このような状況でもm3.あたりには、開業医と勤務医の利害関係は相反しないので仲良くやっていきましょうって主張が多いんですよね。で、勤務医の負担軽減案についてはスルーするみたいな。
そういえば、銚子の病院の最後の日みたいなことやっていたけど、寝たきりの患者ばかりだったよな・・・・。

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