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2011.01.26

整理タンスは早すぎた

ソースでわかるSixapart転落の歴史 というエントリーを読んで考えたこと。

そもそもプログラムなんて全然分からない、リンク先の人に比べて、圧倒的に低レベルなユーザーであった自分もまた、同じような頃に、違った体験を通じて、MovableType に挫折した。

ユーザー体験は相転移する

blog 時代の最初の頃、そもそも素人に手が出せるblog スクリプトなんてMovableType ぐらいしかなかった。

今も昔も、プログラムが理解できないユーザーにとっては、ファイルを書き換えることは「手探り」なのだけれど、当時のMT は、インデックスファイルに画面にあらゆる機能が書き込まれていたから、けっこうどうにかなった。

素人であった自分にとって、「どうにかすること」というのは、「こうしたい」という機能をGoogle で検索して、誰かが公開してくれたソースをそのままコピーして、自分のファイルに貼り付けることなのだけれど、ファイルは基本的に一つだったから、ファイルを眺めて、なんとなく「ここだろう」という場所にコピーしたソースを貼り付けると、実際にけっこうどうにかなった。

「どうにかなる」こと、「何とか手が出る」ことが、素人ユーザーだった自分にとっての「MovableType の良さ」だったのだけれど、MTのバージョンが4に上がって、「何とか」はいきなり絶望に変わった。

MT4はモジュール化が行き届いていて、一つのファイルにごちゃ混ぜだった細かな機能は、モジュール形式に整理されていた。

インデックのスファイルはシンプルになって、呼び出すモジュールのリンク集みたいなものに変わっていた。それはたしかに「きちんと」した改良で、ユーザーに対してより「親切」な構造になっていたのに、自分にはもう、手も足も出なかった。

今までずっと使い回してきたつぎはぎだらけのインデックスファイル、どれだけ無様でも、それでも「うちの看板」としてずっと使ってきた画面は使えなくなって、今までずっと、ろくにマニュアルも読めない、そもそもCGI もPerl も知らない素人でも何とかなったMovableType は、漸進的な改良が重ねられた結果として、ある日いきなり、「マニュアルを読まない素人」を絶望させるものに変わってしまった。

おもちゃ箱にも意味がある

古い世代のMovableType を支持してきたユーザーの一部は、恐らくはエンジニアの人たちが考えている以上に素人じみた人たちだったのだと思う。

素人は、どれだけ親切なマニュアルを用意しても、それが理解できない。そもそもマニュアルを読む習慣を持たない。ただただ「こんなことをしたい」という何かを検索して、それを解説しているサイトから、必要なソースファイルをコピーして、「たぶんここだろう」という場所に貼り付けては喜んで、また「改良」に精を出す。

そうした「素人」は、たぶんMT4の「きちんとやる人には便利」な改良を見て、見捨てられたと感覚して、あきらめた。

おもちゃ箱がほしい人に整理タンスを与えてはいけないのだと思う。

ある場所への「入門」以前、単に「それが面白そうだからちょっと触ってみたい」というレベルの人たちを取り込む過程では、使いやすさや分かりやすさといったものに認識のギャップが生まれて、良かれと思って行った改良が、結果としてユーザーを拒絶してしまう状況がある。

「入門者」に支持されるような使いやすさと、「ズブの素人」に支持される使い勝手は全く異なる。入門者は見通しの良さを好むけれど、素人は試行錯誤がやりやすい環境を好む。見通しの良さは、どこに何があるのかが分かっている程度の理解があって、はじめて役に立つ。そもそもそこに到達していない初心者にとっては、全部見せてくれることのほうが、よほど大切なことになる。

素人はたぶん、引き出しや棚よりも、おもちゃ箱をより好ましいと感じる。どんなおもちゃが自分に必要なものなのか、素人はそれすら分からないけれど、とりあえずおもちゃ箱を探していれば、何かが見つかる。「とにかくここを探せば目当てのものが見つかる」という感覚が、素人を安心させる。それは非効率かもしれないけれど、マニュアルが読めなくてもどうにかいける。

整理タンスにおもちゃが格納されてしまうと、見た目はたしかにすっきりするけれど、おもちゃ箱を取りあげられたばかりの子供は、もしかしたら目当てのおもちゃが見つけられなくて、泣き出してしまう。整理タンスというものは、それぞれのおもちゃが、自分にとってどんな意味を持ち、それをどう分類したいのか、子供にそんな認識が生まれて、はじめて役に立つものだから。

理解も拒否するような素人が、そもそもMovableType の顧客だったのかどうかは分からないけれど、構造を「改良した」代償として、「顧客が本当に必要だったもの」が失われてしまう場面というのは、たぶんいろんな業界で認められるのだろうと思う。

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