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2011.08.06

Amazonのレビューについて

「韓国に関するフジテレビの報道姿勢はやりすぎだ」という話題があって、フジにスポンサーとして参加している「花王」が叩かれて、Amazon のカスタマーレビューがものすごいことになっている。

「この製品を買ってはいけない」だとか、「花王は韓国の手先だ」とか、ネガティブなコメントが50ぐらいついていて、「使いやすいです」みたいな無難なレビューは、序列のした側に押し込まれて、その製品が実際のところどうなのか、レビューからは読み取れないような状態。

ものすごい熱気を感じることには間違いないのだけれど、「花王という会社にダメージを与える」ことがその目的なのだとしたら、力の使いかたを間違えている気がする。

密林のレビューは恐ろしい

密林のカスタマーレビューは、本を置かせてもらう側からするとあれぐらい恐ろしい場所もない。

あの場に書かれた内容について、作者の側からは言い訳できないし、誰かが本にお金を支払ってくれる、まさにその瞬間、買う人はそのレビューで最終的な意志を決定することになる。

支払いボタンと、レビューの記事と、Web ページ上でのあの近さが恐ろしい。書評サイトでお勧めされて、じゃあ買おうなんて思ったそのとき、レビューの記事が目に飛び込んでくる。実際の購買が、レビューの内容でどの程度左右されるものなのか、売る側からは分からないにせよ、密林で何かを販売する人は、みんなあの場所を恐れているものなのだと思う。

叩きと推奨はよく似ている

「いい本だ面白かった」という5つ星のレビューと、「ひどい内容だ絶対に買ってはいけない」という1つ星のレビューとは、購買行動において同じ程度の、同じ方向の効果を持つ。どちらの言説も、恐らくは購買を決定した人の背中を押してくれる。

たとえばこれが、「この本が取り上げているテーマはたしかに面白い。しかし原著の誤読に基づいた意見が散見されて鵜呑みにできない」というレビューがあって、星が3つついていたりすると、購買の意志は大いに揺らぐ。「この分野ならば、この本のほうがおすすめ」といった記事があったら、もしかしたらそちらを購入してしまうかもしれない。

極端な対抗意見は、むしろ購買を後押ししてしまう可能性がある。「買ってはいけない」という本が流行した際、あれを「トンデモだ」と考える人も多くて、「買ってはいけないは買ってはいけない」という検証本が発売された。元の本を真っ向から叩く内容であったにもかかわらず、「買ってはいけない」と、「いけないは買ってはいけない」とは、隣り合わせに平積みされて、両方ともよく売れた。

「買わせない」文章の書きかた

Amazon で購買ボタンを押す人は、そこを訪れた時点で、すでに「これを買おう」という意志を持っている。そうした人に、「これを買おうという、お前の人間性それ自体が間違っている」などと、その人を真っ向から大きく否定してしまうと、否定されたその人は、むしろその本を買うことで、その否定に対抗する。結果として全面的な否定というものは、購買をむしろ後押ししてしまう可能性がある。

的を一つずらせば達成できる目標に、それ以上の力を叩きつけてしまうと、目標はむしろ遠のく。購入する人をためらわせる文章は、たとえば「この本が目的とするところは理解できるものの、根拠になった文献を読み間違えている」だとか、「この本が取り上げている領域はたしかに面白いのだが、この本については支払った金額に見合った内容を持っていない」といった書きかたになる。

その分野の知識を仕入れたいという、購入する人の意志を肯定しつつ、「その目的は正しいがこの本を買うという手段はベストじゃない」という、肯定9割、否定1割の態度を取ってみせることが、購買をそらす役に立つ。

「買わせない」文章というものは、一見すると正面から叩いていないから、売る側としては対処がかえってやっかいになる可能性もある。密林を通じた不買運動は、それなりの文章を、その会社の製品に対して網羅的に付加すると、案外馬鹿にできない効果があって、対処のやりかたを含めて、これから問題になってくるのだろうと思う。

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Comment & Trackback

花王が取るべき一つの冴えたやり方

Togetter – 「花王 不買に関するツイート まとめ(韓国・フジテレビ関連)」 amazonでフジテレビスポンサーの花王商品が鬼女により炎上wwwwwww:ハムスター速報 高岡騒動で鬼女が…

「買わせない」文章 → 何だか medtoolz 先生の最初の本の完成直前のコメント欄を思い出しました。あれ以来、しばらくコメント欄が消えていたような気がします。考えすぎかもしれませんが

あれを最初に見たときのがっかり感はすごかったのです。。

[…] Amazonのレビューについて – レジデント初期研修用資料 […]

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