2007年5月29日

Power Point 力業

「今度の地方会、君の患者さん出すから準備しといてね」

こんなことを上司に宣言される地方会直前。

グラフ作成ソフトに数字打ち込んでる余裕なんてない時は、 Power Point で図版を全部手打ちする。そんなやりかた。

「分かりやすい経過表」の考えかた

地方会のスライドは10枚。表紙に1 枚、現病歴と検査所見、画像の紹介に1 枚づつ。 まとめや考察、結語にそれぞれ1 枚使って、残るのは真ん中3 枚ぐらい。

ここまでは比較的簡単。カルテを丸写しすれば現病歴は作れるし、検査の数字を写したり、 画像を取り込んで切り貼ったりするのも、単なる作業。考察を考えるのは、さすがに上級生の仕事。

問題なのは真ん中3 枚。これを使って患者さんの診療経過を表現するんだけれど、 カルテから代表的なデータを拾ってきて、それを視覚化して上手にまとめるのは難しい。

本来ならば、情報の視覚化こそが、スライド作成の腕の見せどころ。 締め切りが近いときにはそんなこと言ってられないから、他人様の発想を借りてくる。

具体的にはこんなことをする。

  • PubMed を使う:「Limits」を選択して、「links to free full text」「Case Reports」にそれぞれ チェックを入れてから病名を検索すると、PDF がダウンロード可能な症例報告だけが残る。症例報告には、 たいていの場合経過表がついてくるから、それを見ながら考える
  • Google を使う:Google のイメージ検索で「clinical course」という言葉を検索すると、 いろんな病気の臨床経過表が引っ張れる。それを参考にして経過をまとめる
  • PowerPoint 検索:病名を検索するとき、「.ppt」という文字列を一緒に検索すると、 パワーポイントプレゼンテーションだけが検索できる。運がよければ、「そのものずばり」のスライドが ダウロードできる

たとえばPubMed からこんな表を引っ張ってきて、それをPowerPoint で作ることにする。

keika.jpg

Internal Medicine 35: 315-318, 1996 より引用。

これを作るのに必要なものは3つ。

  • 治療経過を書くための横棒グラフ
  • 日程や単位を記載するための目盛り軸
  • データを視覚化するための折れ線グラフ

これさえ描ければ、見た目は同じスライドが作れる。

横棒グラフ

治療薬や酸素投与量を書くときに使う横棒グラフは、ただの四角形。

PowerPoint のメニューから四角形を選んで、適当に大きさを調整すれば大丈夫。

「線の色」と「塗りつぶしの色」を同じに指定すれば、輪郭線を消すことができる。

目盛りのついた縦軸、横軸

最初に必要なのが、目盛りのついた軸。

PowerPoint の線描画機能だけでこれを作ると、 後から「もう少し伸ばしたい」なんて思ったときにドツボにはまる。

伸び縮み可能な目盛り軸は、以下のように作る。横目盛りの場合。

  1. まずは小さな縦棒をひいて、それを必要な数だけコピーする。これが目盛りになる
  2. 全ての縦棒を選択=> 図形の調整=> 配置/整列=> 上揃え で一列に並べる
  3. もう一度全ての縦棒を選択=> 図形の調整=> 配置/整列=> 左右に整列 で等間隔にする
  4. 等間隔に並んだ目盛りにくっつける形で横棒をひく。これが軸になる
  5. 最後に全てを選択=> 図形の調整=> グループ化 で一つの固まりにする

これで、長さ、幅とも自由に調整可能な目盛りが作れる。縦軸も同じ。

折れ線を作る

経過表に必要なのは、目盛りのついた軸と、あとは折れ線グラフ。

たとえば温度板をスライドにするときとか、検査結果を図表にする時なんかは、 全部折れ線グラフのお世話になる。

時間がないとき、エクセルは役に立たない。まめにデータを打ち込んでる人は いいんだろうけれど、発表直前になって資料引っ掻き回すようなときには、 数字を打ち込む余裕なんてない。結局手書き。

やりかたは、PowerPoint 上に適当に折れ線を作って、 後から目盛りに合わせて、あるいは感覚に従って、 折れ線の「関節」をいじって、思う形に近づけていく。

  1. オートシェイプ=> 線=> フリーフォーム を選択
  2. Shift キーを押しながらクリックしていくと折れ線がかけるので必要なだけ折れ線をひく
  3. 折れ線を右クリックすると「頂点の編集」という項目があるので、これを選択する
  4. 折れ線のすべての「関節」が移動可能になるので、あとは適当に形を作って、全体の帳尻をあわせる
  5. 折れ線の下側を塗りつぶすときには、形を作ってから折れ線を右クリック=>閉じた曲線でOK

最後に、前に作った目盛り軸と折れ線とを全て選択して、図形の調整=> グループ化 を行っておく。

こうすると、最後に全体のバランス見ながら微調整するのが簡単になる。

作例

引用した図を実際に作ると、こんなふうになる。

ppt.jpg

データは全ていいかげんなものだし、グラフも正確でないけれど、雰囲気は伝わると思う。

実際問題、google でいろんなプレゼンテーションをダウンロードして見て、 「上手な図表だな」と思ったものは、たいていが「力業」で手書きしていて、 エクセルなんて使っていない。洋の東西を問わず、医師は案外ズボラだったり。

「手書き」は下品なやりかたなんだけれど、結構役に立つ。

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2007年1月 5日

皮下注射を用いた維持輸液

点滴ラインがとれない高齢者とか、認知症がひどくてすぐにラインを抜いてしまう患者さんなどに 輸液を行う、もうひとつのやりかた。

歴史

皮下に大量の輸液を行うことは100年来行われているらしい。

1950年代、高張液を輸液したり、あるいは大量の低張液を輸液した際に血圧低下などの トラブルが報告されてから下火になったが、最近になってみなおされるようになった。

急速輸液はできず、また使える輸液性剤は限られるものの、皮下注射は穿刺部位を選ばず、 簡便で、低コストな輸液方法として、緩和ケアやナーシングホームの現場で広まっているという。

利点と欠点

利点

  • 安価
  • 末梢静脈輸液に比べておおむね快適
  • 肺水腫や輸液過剰を起こしにくい
  • 穿刺が簡単で、静脈輸液に比べてわずらわしくない
  • 針が抜けても水が漏れるだけなので、スタッフが監視したり、手足を縛る頻度を減らせる
  • 末梢静脈炎を起こしたり、輸液ラインから全身の感染症に発展する可能性が低い
  • ラインが凝血する可能性がほとんどないため、クランプを閉じるだけでいつでも中断できる

欠点

  • 最大でも毎分1mlの速度でしか輸液できない
  • 1日に輸液可能な最大量は、2箇所の穿刺部位を併用しても3000ml程度
  • 特定の電解質輸液や、栄養点滴を行うのは難しい
  • 注射部位の浮腫が生じる

適応と禁忌

適応

  • 軽度から中等度の脱水患者
  • 認知症や高齢者など、通常の点滴が難しい患者
  • 高齢者や末期がん患者など、長期間の輸液が必要な患者は、皮下の方が合併症を減らせる可能性がある
  • 在宅輸液や訪問看護などでも有効

禁忌

  • 急速輸液が必要な患者では有効でない
  • 重症心不全や、出血傾向のある患者などでも用いないほうがいい

やりかた

  1. 穿刺部位をヨードで消毒する
  2. 23~21ゲージの翼状針か、テフロン針を用意する
  3. 消毒した部位を45~60度程度の角度で皮下に穿刺
  4. 1日量はだいたい500から1000ml程度。これを24時間で輸液

部位

  • 歩ける人なら腹部、前胸部、肋間、鎖骨下などの皮膚を用いる
  • 歩けない人ならば、大腿部、腹部、腕の外側などを用いることもできる
  • 穿刺にテフロン針を用いたときの平均使用期間は11日、 金属翼状針を用いたときの使用期間は5日前後

量と速度

  • 皮下注射では、毎分1ml、1日量で1500mlの輸液まで注入することができる
  • 2箇所の穿刺部位を併用した場合、輸液量は最大3000ml/日
  • ヒアルロニダーゼを併用すると吸収が早まるらしいが、 用いても用いなくても変わらないという報告もある

使用できる輸液

生食を用いるのが基本で、1号液や、もっと低張な輸液を用いてもいい。

かつては5%糖液を用いた際に血圧低下の合併症が報告されたが、 最近の報告では、合併症の発生率は他の輸液製剤と大差ないらしい。

ヒアルロニダーゼを輸液に混ぜると吸収が早まるらしいが、アレルギーを生じたり、 局所反応を起こす可能性もある。必ずしも必要な物として推薦されているわけではない。

カリウム製剤については、輸液に混合することも可能。 KCLで20~40 mmol/L ぐらいなら大丈夫らしいが、個人的にはすごく

3号液なら、そんなに気にしなくても大丈夫か?

モルヒネの吸収についてはデータがないらしいが、普通の麻薬静注と同じ感覚で 用いてほぼ大丈夫なはず。

Letter のほうに投稿されていた「皮下輸液可能な静注性剤」として、 メトクロプラミド、ロラゼパム、ジフェンヒドラミン、 デキサメサゾン、プロメタジン、ミダゾラムなどが挙げられていた。

その他

editorial のコメント。

  • 持続皮下注は、だいたい20ml/h ~75ml/h 程度の速度で行うのがいい
  • この方法は背中でも穿刺できるので、点滴を引き抜いてしまう人でも、 手のとどきにくいところに点滴をできるのが利点
  • 穿刺部位が赤くなったら抜き時なので、透明なフィルムドレッシングで穿刺部位を覆うのが望ましい

夜間寝ているときに輸液しておいて、日中は皮下に入った分から水分を補給するやりかたとか、 皮下注製剤に鎮静薬を混ぜておいて、夜間に適切な沈静を得るやりかたとか、 いろんな応用ができるらしい。

昔は子供の輸液方法として皮下注射が用いられていたそうだけれど、 やったことのある先生の話だと、「あれは色素沈着するから、親御さんうるさいよ」とのこと。

一応「24時間持続点滴」という事で療養病棟の加算が取れるから、 これから広まるかも。

参考文献

Hypodermoclysis: An Alternative Infusion Technique

Editorials - November 1, 2001

Letters to the Editor - July 1, 2002

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2005年6月17日

現状を肯定するという行為

例えば岩だらけの道があったとして、その道に転がっている岩は、道行く人からは邪魔者扱いされていたという状況があって。

ある旅人がその岩を指して「休むのにちょうどいい椅子だ」と、そこに座って休んだとき。

路傍の岩も、それを「椅子」といって座ってしまえば椅子になり、その旅人の座りかたが堂にいっていれば、やがて賛同して座ってみる人も増え…。やがて邪魔な岩場であったその場所は、休憩するのにちょうどいい場所として、栄えるかもしれません。

ものの価値というのは結局のところ、当事者がそれをどう思うかにつきるような気がします。

例えどんな場所であっても、そこにいる人が「自分のいるところはすばらしい」という信号を発信しつづけたならば、そしてその信号が、世の中の誰かの心に響いたならば。その場所で働きつづけることは損な選択、大学病院で働くというのは下らないことだという現在の流れは、あるいは変えることができるのかもしれません。

自己の置かれた現状を肯定する強い力というのは、現実の世界をも変える可能性があると信じています。

宮沢賢治は、北上川の河川敷のことを、なぜ「イギリス海岸」などと呼んだのでしょうか?

実際にいってみると分かるのですが、あのあたりはよほどの渇水期にならないと川床が見えません。物語のような風景を期待していくと、見えてくるのは単なる「ドブ川」だったりします(地元の人すいません)。

賢治がイーハトーブと呼んだ花巻の世界は、観光地にするにはあまりにも殺風景で、よほどの強い思い入れが無いと、あの場所を楽しむことなどできません。

世の中のありようというものは、「空」でしかない本体に、他者からの見えかたである「色」が写り、人の目に見える実在が作られると仏教は教えています(適当)が、仏教に傾倒していた賢治を取り巻く当時の岩手の状況は、単なる寒村でしかありませんでした。

インターネットなど無かった時代、観光でお金を稼ぐ考えなどまだまだ少なかった時代。宮沢賢治は、花巻の寒村をして「ここはイーハトーブというすばらしい場所」と宣言することで、そこに住む人の目に見える「実在」のありようを変えようとしたのではないでしょうか。

大学病院で働くという選択の価値は、どんどん落ちています。それはもう間違いなく。

「白い巨塔」が出版された当時の状況と、今の大学の現状とを比べてみれば明らかです。もちろん部分的には、大学の復権というものも現れているところもあります。でも、大勢で見れば、大学病院で働きつづけるという選択肢は、明らかに「損な」選択になってきつつあります。

それでもやはり、現況を肯定する努力は続けて行きたいと思います。

卒業後数年間、市中病院で研修を積んで、そのあとここ数年は大学病院の中の人を続けていますが、もちろん大学病院の悪いところは山ほどあります。ここで研修することが、はたして全ての研修医に対してベストな選択肢であるといえるのか、正直疑問もあります。

でも、中にいる人間が「大学病院は損だ」などと言い出したら終わりです。それは、自分達の生活そのものを否定する、非常に惨めな行為であると同時に、困難な状況の中で大学という選択をしてくれた研修医諸氏に対する侮辱です。

大学病院というものは、全ての医者の自己認識の原点になる存在です。

「そんなことは無い」「もっとすばらしい施設はたくさんある」。もっともです。優れた臨床家は、むしろ外の病院のほうがたくさんいます。病院の医師以外の生きかた、何年もインドの奥地をさまよってみたり、ニカラグアで大腸ファイバーをやったりしている日本人の医師も知っています。どの先生も、自分達の生きかたをとても楽しんでいます。すばらしいことです。大学の奥でいじいじと仕事をしているよりも、よほど面白そうです。

それでも、すべての価値の原点は大学病院です。

自分の生れた川を最高と思わないサケはいません。サケの稚魚が生まれて初めて飲む水は、自分の生まれた川の水です。サケも「水の美味しい、まずい」を見分けるかもしれませんが、そのとき原点になるのは、常に自分の生まれた川の水の味です。

医師も同様です。医学生がはじめて目にする臨床医というのは、大学病院の医師です。その姿を見て、「自分もいつかああなりたいものだ」と思うか、「大学の医者にだけはなりたくない」と思うかは、それぞれの人の選択です。それでも、はじめてみる医師が「大学病院医師であること」を楽しんでいなかったならば、学生は医師として働くこと自体に夢をもてなくなってしまいます。

自分にできることなど、ごくごくわずかなものです。実力的な問題。年齢的な問題。今の施設にいる期間も、たぶんもうそんなに長くはないのでしょう。

それでも、ただ何もしないで悲嘆に暮れることはしたくありません。大学病院にはいろいろな問題があります。矛盾しているところ、帰れないところ、面倒な人間関係、重症ばかりの病棟。それでも、そういったことまで含めた「大学病院の面白さ」というものは絶対にあって、これを楽しまないうちは「病院で働く面白さ」というのは語れません。

悲嘆よりは変化です。

自分の発信した信号が、どこかの誰かに、わずかにでも変化を起こせたら。大学病院原理主義者である私は、そんなことを考えています。

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2005年6月15日

Expression

発表のスライドなどを直前に作るとき、結構問題になるのが、温度板や経過表といったもの。
07f1.jpg
こんなのとか
07.jpg
こんなやつ(出典:NEJM Volume 352:2508-2514 June 16, 2005 Number 24)。

患者さんの臨床データを、まじめにエクセルなどに記録していれば、何も悩まずにグラフ化すればいいのだが、忙しいさなかではなかなかそうも行かない。

PowerPointにも図表作成機能はあるのだが、なにぶんデータを数字で入力してくれないと、グラフを作ってくれないのはエクセルと同じ。

「なんとなくそれらしいものを、短時間で作る」とき、お絵かき系のソフトでグラフをでっち上げてしまうと簡単にいく。もちろん数字は適当になるが、どうせ発表スライドなど、まじめに見る人など少ないだろう。

絵を書くソフト(ドローソフト)というのは、代表的なものでAdobe Illustrator 、Corel DRAW といったものがあるのだが、どれも8万円近くと非常に高価。最近は、フリーのドローソフトで dynamic draw というものがあり、これもかなり高機能なのだが市販品にはさすがに負ける(とは言っても、普通に絵を書くにはこれでも使い切れないほどの機能がついてくる)。

最近になり、昔市販されていたExpression というドローソフトがバージョン3になり、さらにマイクロソフトに買収されてフリーウェアになった。以下、ダウンロードのしかたと日本語化のしかた。

今は英語版しかない(昔は日本語版を売っていた)ため、Windows上で使うには、いくつかの細工が必要。もともとが市販されていたソフトだけあり、実際に使ってみると十分に実用になる。苦労してダウンロードするだけの価値はあると思う。

インストール用ファイルのダウンロード

マイクロソフトのダウンロードセンターからExpression3のファイルをダウンロードしてくる。表から入ると登録が必要だが、リンク先は直リンになっている。  

メニューの日本語化に必要なファイル

CreatureHouseのサイトから、Expression3Jのアップデータをダウンロードしてくる。このアップデータを解凍すると、中に「localizeJ.txt」というファイルがある。これを用いて、メニューを日本語化する。

ヘルプファイルとマニュアル

販売中止になったソフトなので、日本語のマニュアルが存在しない(本があるが、バージョン2対応のもの)。このため、インターネットアーカイブから販売元のサイトにいき、古い体験版をダウンロードしてくる。

他に必要なソフト

exeファイルを書き換える必要があるので、バイナリエディタが必要。代表的なバイナリエディタとしては、とか、スターリングとか、PowerWitchとか。自分は昔から狐を愛用(シンプルなので)。ソフトにパッチを当てるのに特化していたものに、ホワイトボックスとか、FireFlowerなどがあったが、もう手に入らない。

ヘルプファイルを体験版から引っ張り出してくるのに、WinPackというソフトを使う。これはInstallShieldを部分的に解凍して、中にあるファイルを取り出すソフトで、これを用いて日本語の体験版からヘルプファイルだけ抜き出してくる。

インストールのしかた

1.本体のインストール
"CreatureHouseExpression3_3.exe" をダブルクリックするだけ。 普通にインストールすれば問題ない。

2.ファイルの書き換え
このままでは起動すらしないので、まずはファイルを書き換える。

バイナリエディタを用いて、インストール先のフォルダ内のe3.exeというファイルを書き換える。0036170E という番地の、75という記載をEBと書き換えるだけ。ホワイトボックス用のBCG型式では、以下のとおり。

file e3.exe
0036170E: 75 EB

これでとりあえず、英語版のExpressionが立ち上がるようになる。

3.メニューやダイアログの日本語化
製品版Expressionのアップデーター "E3JWinUp342.zip" を解凍する。中に"localizeJ.txt"というファイルがあるので、これを"e3.exe" と同じフォルダにコピーする。これだけでメニューが日本語化する。

E3JWinUp342.zip内の、他のファイルは要らない。

4.ヘルプファイルの抽出
インターネットアーカイブからダウンロードしてきた日本語体験版のZipファイルを解凍、その中のdata1.cabというファイルをWinPackで展開する。中に 日本語ユーザーズガイド e3.pdf、チュートリアルe3tutorial.pdfという2つのPDFファイルがあるので、それを取り出す。あとのファイルは不要。

取り出したヘルプファイルは、本体のあるフォルダにコピーしておく(英語版のPDFを上書きしてしまう)と、ヘルプを開いたときに日本語のヘルプファイルが立ちあがるようになる。

参考サイト
2ちゃんねるのExpressionのフォーラム

Expression3覚書/妄碌庵

2005年6月12日

パンダの写真

臥龍大熊猫繁殖基地より。

Here we are.JPG

I want with you.JPG

Shining.JPG

Don't disturb us.JPG

ha Ha.JPG

Hi.JPG

Fresh Bamboo.JPG

書くことも無いのでパンダの写真で穴埋め。

2005年5月28日

ハトがハトでいるために

タカ派とハト派のゲーム理論。

「タカ派の戦略->どちらかが大怪我して動けなくなるまで徹底的に戦う。
「ハト派の戦略」->自分より強そうだなと思ったら、すっと引き下がる。

集団の中でタカ派とハト派が共存したらどうなるか。普通に考えると、戦わない選択肢をとるほうは滅んでしまうと考えるが、そうではないらしい。

ゲームのルールは以下のとおり。

●タカ派とハト派が戦うケースでは、必ずタカ派が勝つ(10点もらえる)。
●ただし、敗者のハト派は引き下がるので、ダメージを受けない(0点)。
●タカ派同士、ハト派同士が戦うケースでは勝率50%になるが、タカ派同士は徹底的にダメージを与えるので負ければ50点失い、勝てば10点もらえる。
●ハト派同士の戦いはダメージを受けないので、負けても0点。勝てば10点。
●そのかわり、なかなか決着がつかないので、ハト派は時間的ロスが生じる(-3点)。

このルールでグループ内のタカ派とハト派を競わせると、タカ派28%、ハト派72%の集団になった時点で均衡状態が生じるという。

理論と現実社会とは違う。実世界でのハトにだって、プライドぐらいある。タカから喧嘩を売られるとつい買ってしまう。攻撃力が低いので、タカとハトとの争いは常にタカが勝つ。ゲーム理論なら、このときのハトのダメージはゼロ。実際には、負ければ誰でもくやしい。ハトのダメージは絶対にゼロにはならない。

集団は、当初は理論どおりにハトとタカとが共存するが、そのうち傷ついたハトが一羽、また一羽と脱落していく。幸い、医局には毎年人が補充される。新しいハトがまた補充され、医局は再び安定を取り戻す。

実世界で、ハトが安定してハトとして生き延びるためには、徹底して戦いから引かなくてはならない。ゲームのルールの中で、ハト派の最大のメリットは、つまらない争いのダメージが「ゼロ」であるという点に尽きる。争い事が生じたとき、自分自身にダメージを残さないためには、ハトはタカ以上にすばやく動く必要がある。

もともと、どう考えてもハトよりタカのほうがすばやい。彼我の機動力の差を覆すには、相手の動きを読むしかない。集団の中では、ハト派の数は多い。ハトがハトとして生きていくためには、お互いの情報交換を密にすることで、タカの攻撃を出し抜くことができるかもしれない。

集団の中において、タカは集団に進歩をもたらし、ハトは安定をもたらす。

ハトの仕事は、タカの餌になることだけではない。ハトが集団の中にいることには何かの意義があるはずだし、またそうでなければハトなんかやってられない。

医療の現場においては、タカが新しい治療で持って病気に切り込む一方、ハトはタカが興味のない症例、「当たり前すぎてつまらない」症例を黙々とこなし、病棟の雰囲気を保つ。

ハトにも、どうしても戦わないといけないときがある。立場こそ違え、お互い技術を持った医者の集団だ。治療の方針の大勢はタカ派が決め、たいていはそれで上手くいく。それでも患者さんがうまく治らないとき、ハトが何とかしなくてはならない。

タカの出した治療方針自体を否定すれば、ハトは即座にミンチにされる。自分へのダメージを最小限に、何とか治療方針を変更するにはどうするか。タカの出したプランを生かしたまま、何とかしてハトの考える結論に誘導することを考える。

同じ患者さん、同じ疾患を治療しても、ハトの考える治療プランと、タカの考える治療プランとは違う。同様に、ハトの考える患者さんのゴールと、タカの考える患者さんのゴールも、また異なる。たいていの場合、タカは侵襲的な治療、完全な治癒を目指す。タカから見れば、ハトのプランは「ヌルい」。ハトのゴールも「それでは、患者さんを治療したことにならないよ」と一蹴される。

物事が上手くいかないとき、人はその戦略を否定されると怒り出すが、ゴールを変更されても結構大丈夫なことが多い。負け戦のとき、将軍は「この作戦を止めて、撤退しよう」とは言わない。代わりに、「後ろ向きに進軍」という言葉を使う。

集団の中でハトが生き残り、そしてハトの役割を果たすためには、患者さんにトラブルが生じた場合に備え、常に「ハトの考えるゴール」への持っていきかたを考えておく必要がある。普段はそうしたプランが日の目を見ることはほとんど無い。だが、タカのプランが一度上手くいかなくなったとき、タカが熱くなる前に別の目標を示せなければ、集団の中にハトが存在する意義は無い。

ハトでいるのも、結構大変なんだ。

2005年3月29日

google八分

3月半ばになってアクセス数が激減、googleの検索ワードが全く引っかからなくなった。表ページ以下、サイト内においてあるもの全てだめ。

ついに見捨てられたかな、と思っていたら、圏外からのひとこと(分野は全く違うがものすごく勉強になる)のような大手でも同じようなことが生じているらしい。

google検索が生きていた頃は、だいたい3万ページビュー/日程度であったものが、今は半分以下。

最近は、世間を敵に回すような文章はあまり書いていないはずだけれど…。

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2004年12月14日

溺水の治療

Drowning: a review of epidemiology, pathophysiology, treatment and prevention

かつて溺水の死因としては喉頭痙攣、窒息、水分の誤嚥が主なものであると考えられてきたが、喉頭痙攣が従来言われていたほど高頻度に発症するのかどうかは議論が分かれている。

溺水の初期の実験データからは、淡水の溺水患者はいっ水状態になり、血中のNa濃度が低下し、一方海水の溺水患者は脱水状態となり、血中Na濃度は上昇すると言われてきた。しかしこうした仮説は動物実験のものであり、人体でのデータが蓄積されてからは否定されつつある。

1966年の犬の実験での報告では、溺水の実験犬は一様に低酸素血症、代謝性アシドーシス、高CO2血症を示したものの、血液中の血色素濃度、電解質の変化については海水、淡水を問わずに大きな変化は生じなかったという。

1963年の人体でのケースシリーズでも、淡水溺水の患者には実際にはいっ水になっている患者は多くはなく、溺水患者のさまざまな血行動態の変化にもっとも大きく影響したのは誤嚥した水の性質ではなく、それに付随した低酸素血症の程度であったとしている。

溺水患者の予後については、患者の体温が低いほど予後が悪いことが分かっている。これはおそらくは患者が水に使っていた期間がより長いためと考えられるが、水中での時間が25分を超えたケースの予後は非常に悪いという。小児では、10分以上の水中時間は感度96.6%、特異度89.5%で患者の悪い予後を予想しえたという。

逆説的に、おぼれるならば冷たい水でおぼれたほうが予後がよい。これはおそらく、低体温が神経保護的に働くからと考えられている。

溺水患者の治療

水から引き上げられた患者は、しばしば嘔吐して誤嚥を悪化させる。ハイムリッヒ法などの嘔吐を誘発する手技は明らかな気道閉塞が無い限り行うべきではない。

患者に低体温があった場合、可能な限り早く復温を行う。患者に循環虚脱が合併していた場合、PCPSを用いると有効であるという。

合併する低酸素血症にたいしては積極的な治療を行う。入院当初の胸部単純写真はその後の呼吸器合併症の予後を予測できないため、入院時のレントゲンが正常であっても油断してはいけない。

ARDSに陥る患者は決して珍しくない。対策としてECMOなどが検討されているが、その効果についてはまだ結論が出ていない。肺浮腫を生じたり、感染を合併したりする患者も多いが、予防的な抗生物質投与は予後の改善効果が無かった。また、ステイロドについても肺の機能予後を改善すると信じられてきたが、その効果は証明されなかった。

脳の保護策として、伝統的に過換気、低体温、バルビツール酸投与などが組み合わされてきたが、その効果についてはいまだにはっきりした結論が出ず、ルーチンに行うことは薦められない。

最近の報告では、溺水患者に脊髄損傷を合併することは非常にまれであることが報告されており、明らかな外傷がない患者であればネックカラーをルーチンに装着する必要はないかもしれない。

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2004年12月10日

高用量のAT-�製剤は敗血症の予後を改善しうるか

Effect of long-term and high-dose antithrombin supplementation on coagulation and fibrinolysis in patients with severe sepsis

敗血症の急性期には体内での凝固能が亢進し、AT-�が消費されることが分かっている。このため、敗血症患者に対してAT-�製剤の投与により予後を改善することが試みられてきたが、4日間程度の短期間の投与では、予後の改善効果を証明することはできなかった。

このトライアルでは、対照群20名、AT-�群20名の計40名の敗血症患者にAT-�製剤を14日間投与し、患者の凝固系のパラメーターがどう変化するかを検討している。

患者は重篤な敗血症と診断されたICUの患者で、トライアル開始と同時に患者のAT-3を測定、AT-�濃度が正常値の120%になるようにAT-�製剤を連日投与し、凝固能の変化を測定した。

結果、AT-�投与2日目よりAT-�血中濃度は目標値に達し、その濃度は14日間にわたり維持することができた。凝固のパラメーターについては、TT/PT/フィブリノゲン濃度はAT-�投与6日目ごろより有意に正常値に近づき、血小板数は実薬群、コントロール群とも14日間の経過で徐々に正常化した。

また、活性化プロテインCの濃度もAT-�投与群で有意に上昇していた。

敗血症の予後の改善を証明した薬剤のひとつに、活性化プロテインC製剤がある。この薬は当分の間は日本に入ってきそうも無いので、代わりに使えそうなものとしてアンスロビンのようなAT-�製剤がある。

このスタディでは予後については全く論じていないが、AT-3も大量に投与すると活性化プロテインCを投与したのと同じような凝固パラメーターの変動を得ることができると結論している。一方、このスタディの期間中、実際に敗血症で亡くなった患者さんの数はAT-�投与群のほうがわずかに多いのが気にかかる。もちろん、統計的に有意差は無いのだが。

一番の問題点はコストだろう。アンスロビンが500単位のもの1バイアルで4万円。このスタディどおりの量を使おうとすると、1日量でだいたい4バイアルは必要なので、この14日分で224万円。実際には敗血症の改善に応じて投与量は減るのでここまではかからないだろうが、結構高コストになる。ICUの治療にコストなんて関係ないが、ちょっと勇気のいる金額ではある。

保険屋さんは許してくれるのだろうか?

少量のバソプレシンには腎保護作用があるかもしれない

敗血症性ショックをはじめとする血管拡張型のショックの患者に対して、近年バソプレシンの持続静注が行われるようになり、よい成績が報告されている。

こうしたショック状態になった患者ではしばしば尿量の低下が問題になるが、バソプレシンを少量持続静注することで、こうした問題を解決できるかもしれない。

バソプレシンは本来は抗利尿ホルモンとして知られていた物質であるが、ショック状態の患者に用いた場合、同程度の血圧を維持していても、カテコラミン単独使用で血圧をコントロールした場合に比べて尿量の増加が報告されている。

動物実験で敗血症急性期の高心拍出量状態を作り出した場合、心拍出量は増加しているものの、血中クレアチニンの増加、尿量の低下が観察される。これは何らかの理由でGFRが低下しているからであるが、その理由としては腎臓全体の血流低下によるよりも、輸出細動脈が輸入細動脈に比べてより拡張してしまっているからと考えられる。

バソプレシンは少量で用いると輸出細動脈を収縮させる働きがあり、見かけ上のGFRが増加する。このため、敗血症の急性期の尿量低下に対しては尿量を維持し、腎保護的に働く可能性がある。

敗血症の患者でのノルエピネフリンとバソプレシンとの比較トライアルでは、両者とも血圧は同程度に維持することができたものの、ノルエピネフリン群では尿量の変化は見られなかったのに対し、バソプレシン群では有意な尿量の増加、75%のGFRの増加が見られている。

バソプレシンを使用する量としては、0.01-0.04単位/分としているものが最も多い。この量で1日用いると、1日量はだいたい14-57単位(20単位/1A)となる。

敗血症で入院するような人は、たしかに尿量が低下して治療に難渋する人が多い。血圧が低いのであまりラシックスなど用いたくなく、少量のDOAなど用いてもあまり効果が実感できない。かといってラクテックを狂ったように落としても、今度は浮腫と肺水腫が怖い。

今度何かの機会に使ってみよう、とも思うが、自分の周りは心原性ショックばかり。こちらの患者さんにはバソプレシンの効果は期待できないような気がする。

2004年11月30日

フェニトインによる褥瘡治療

抗けいれん薬であるフェニトインは、長期間の投与で歯肉の増殖の副作用があることが知られている。

この作用は、病理学的には膠原線維と線維芽細胞の増加によるものといわれているが、このことを利用して、フェニトインを創傷治癒を促進させる薬剤として用いることができないかという試みがある。

フェニトインの薬理作用

フェニトインの本来の作用部位は脳皮質の運動野であるが、この作用を発揮するためのフェニトインの量は、通常1日300mg程度である。

経口摂取を開始してから、大体7〜10日で抗痙攣効果が期待できる血中濃度に達する。このフェニトインの代謝産物が、歯肉の線維芽細胞の増殖を刺激し、その結果歯肉の増殖が生じるといわれている。

歯肉の増殖の副作用は、大体患者の半数で生じ、その発生率には人種差がある。 フェニトインの代謝は、本来は肝臓で生じるが、肝臓以外の細胞、例えば歯肉や皮膚の細胞にも、フェニトインの代謝能力があることが分かってきた。

フェニトインが、特に歯肉の増生を促すのは、フェニトインが血液中以外に唾液中にも移行し、局所の濃度が上昇すること、歯垢がフェニトインを吸収し、リザーバーとしての役割を果たしうることなどが、その理由としてして指摘されている。


歯科領域でのフェニトインの使用

フェニトインの創傷治癒の最初の報告は、1958年の歯科領域の報告であった。

これは、手術前にフェニトインを内服してもらうと歯科口腔領域の手術後の治癒が早まり、さらに歯肉の炎症が減少し、痛みがより少ないというものであった。

この報告を受け、フェニトインはまずは歯科領域で用いられるようになり、全身投与するだけではなく、局所の投与で効果があることが分かってきた。 1970年代には歯科領域で用いるためのフェニトインクリームが市販されている。

皮膚の外傷でのトライアル

フェニトインを外傷で用いたトライアルはまだ少なく、いくつかの小さなトライアルと、ケースレポートが報告されているだけであるが、これらの報告の中で、次のような疾患での効果が報告されている。好ましい効果があったのは、下肢静脈血栓による皮膚潰瘍、褥瘡、糖尿病による下肢壊疽、巨大な膿瘍に伴う膿瘍腔の閉鎖、熱傷、手術後の創傷治癒、そして、皮膚移植後の供皮部位等である。

フェニトインを創傷に用いることで得られたメリットは、以下のようなものであった。

創傷治癒の早期化と、肉芽増殖の早期化

創傷部位の炎症の消滞と、滲出液の減少

組織のバクテリア量の減少

痛みの減少

他の方法に比べての、低いコスト


フェニトインの創部に対する作用

フェニトインを創部に用いたトライアルで、用いた薬剤の量を報告しているものはほとんどない。フェニトインを多く用いても、局所投与を行った場合には全身への吸収がほとんど生じないことも報告されている。

フェニトインの局所吸収は、創面の状態、感染の程度、といったさまざまな因子で影響されるため、どの程度の量を用いるのが最適なのかははっきりしないが、常識的な範囲で使用するぶんには中毒の心配はほとんどなさそうである。


フェニトインの創面に対する薬理作用

創傷治癒は、その過程の中でいろいろな細胞が参加する。代表的なものとしては、ケラチノサイト、線維芽細胞、内皮細胞、そして炎症の際に参加する白血球やリンパ球が、互いに連絡を取り合いながら創傷治癒を行う。

外傷が生じるとまずそこには血餅ができるが、しばらくするとその中にマクロファージや肉芽細胞が入ってくる。これらの細胞は、創面を清潔にするとともにさまざまな成長因子を分泌し、血餅はそのリザーバーとしても作用する。

こうした創面にフェニトインを塗布すると、炎症反応は早期に消退し、滲出液は減少し、創部の浮腫が減少する。さらに、フェニトインは創部のバクテリアの量を減少させる作用もある。フェニトインは黄色ブドウ球菌、大腸菌、クレブシエラ、緑膿菌に対して、塗布後7〜10日で抗菌効果が出現する。

この作用は、フェニトインの直接作用なのか、あるいは炎症細胞の活性化を介した間接的な作用なのかははっきりしていない。フェニトインを塗布した創面には、抗体を産生するLangerhans細胞が増殖している、という観察もあるからである。

フェニトインにより治療された創部の生検標本の観察では、通常の治療を行ったものに比べて早期の単球の増殖、線維芽細胞の増殖、コラーゲンの沈着の促進、再上皮化の促進が観察されている。

さらに、フェニトインを用いることで、創部の痛みがより早く減少することが観察されている。この作用はフェニトインの局所麻酔作用によるものといわれ、全身投与のフェニトインも、さまざまな痛みの治療に応用されている。


フェニトイン治療の今後

現在、スプレーで局所に投与するタイプの、皮膚成長因子が市販され、用いられている。こうした薬剤は高価であり、また、市販されてからはまだ日が浅い。

フェニトインは、こうしたものに比べて圧倒的に安価であり、また人体に用いるようになってから、70年近い歴史がある。この治療は安価で、確実に効果が期待できるものとして、もっと用いられてもいいように思う。

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2004年11月28日

せん妄の対策

A practical program for preventing delirium in hospitalized elderly patients

せん妄患者の予防と対策のためのガイド。

入院中にせん妄を生じる患者は予想以上に多く、統計により全入院患者の14%から56%と報告されている。特に高齢者の多い病院、手術後の患者、集中治療室といった施設で患者がせん妄を生じる割合は増える傾向にある。

せん妄を生じた患者はそうでない患者に比べて死亡率が上昇する。せん妄患者の死亡率は10%から65%と報告にはばらつきがあるが、同じ病気の重症度であっても、せん妄を生じた患者の死亡率はそうでない患者に比べて2倍以上に達する。

せん妄の発症の仕方には活動性のせん妄と非活動性のせん妄との2種類がある。前者は発見が容易であるが、後者については見逃されていることが多く、これが臨床の現場での印象と統計で報告されるせん妄患者の高い割合との乖離につながっている。

ある報告では、非活動性のせん妄患者のほうが、活動性のせん妄患者に比べて予後が悪いとしている。これは単に発見が遅いというだけではなく、誤嚥や肺塞栓、褥瘡の発生といった合併症の頻度を生じる割合がより高くなるためであるという。

せん妄の発生原因はいくつかの仮説があるが、脳波を取ってみるとせん妄の患者の脳波は全体に徐波化しており、これは皮質活動が全域にわたって抑制されているためだと考えられている。ある研究者は、せん妄状態というのは色々な病気の最終共通経路として脳全体の酸素代謝が抑制された状態であると考えている。また、脳の活動を支配するニューロトランスミッターに関しては、せん妄患者はコリン作動性ニューロンの活動が抑制され、ドーパミン作動性ニューロンの活動が活発になっているという。

せん妄の危険因子には以下のようながある。

痴呆状態がある患者は、やはりせん妄に陥る可能性が高い。電解質異常、特に低Na血症や高Ca血症がある患者でもせん妄を生じうる。また、酸素濃度が低下している患者、特にパルスオキシメーターの普及に伴ないCO2の蓄積を生じる患者が見逃されていることがしばしばある。その他潜在的な感染症、糖尿病、副腎不全、甲状腺機能異常といったものでせん妄が引き起こされることがある。

薬剤はせん妄の原因として最も高頻度なものであるが、その中でも特に長時間作用型のベンゾジアゼピン、メペリジン、H2ブロッカー、アトロピン、ステロイドといったものに注意が必要である。

せん妄は容易に見逃される。

せん妄の見逃しを防ぐために、The confusion assessment method が考案されたがこの方法で感度94%、特異度90%以上でせん妄患者を発見することができるという。他の方法としてはdigit span test(3-6-2などと任意の数字の順序を復唱してもらい、短期記憶の評価をするテスト)の有効性が報告されており、これは痴呆の患者でもある程度保たれているにもかかわらず、せん妄の患者では困難になることを利用している。

せん妄の患者に薬物を用いるのは極力避けなくては成らない。薬物療法以外に推薦されている方法として、5分間患者の背中をさする、暖かいカフェインの入っていない飲み物を飲んでもらう、リラックスできる音楽をかけるといった方法が紹介され、その有効率は74%に達したという。

ハロペリドールによる沈静は最終手段として考慮する。ハロペリドールは0.5mgずつ経口するか、筋注するかで用いる。静注した場合は半減期が短すぎ、せん妄の治療に用いるには不足になる。鎮静効果は30分おきに評価し、薬物の追加を行うかどうかを判断するが、ハロペリドールは5mg/24時間以上用いてもそれ以上の効果が期待できない。これはハロペリドールを5mg投与した場合、脳内のD2レセプターは24時間後でも90%近く抑制されていたという観察にもとづくもので、5mg以上を用いても副作用を多くするだけなので、他の方法を考えなくてはならない。

今は余裕のある施設にいるのでせん妄の患者は少なくなったが、以前はもう夜間は動物園の様相を呈することもめずらしくなかった。実際問題、救急患者を多くとる日本の救急病院では夜勤帯の人数も限られ、「5分背中をさする」時間などどうやっても作れそうに無い。

欧米のせん妄の対策を読むに連れ、日本とは根本的に人的な余裕が違うなあとうらやましくなる。忙しい病院でできるせん妄対策など、ラインをとってコントミン静注、呼吸が止まらないように3分だけ観察するのがせいぜいだろう。

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2004年11月24日

FFPの使いかた

Fresh frozen plasma in patients with disseminated intravascular coagulation or in patients with liver diseases

外科医同士の会話で「赤」といったらMAP、「白」といったらFFPだが、その使いかたreview。

FFPは主に凝固因子を補充するために用いるが、これを1%上昇させるのに必要なFFPの量は、体重あたり1mlを要する。この法則はワーファリン過剰時などにPTを正常化させる際にも当てはまり、たとえばPTが40%であった75kgの体重の患者のPTを60%まで回復させようとする場合、75掛ける20で1500mlのFFPが必要になる。

FFPを投入するスピードも大切で、出血を押さえるためには最低でも毎分30ml程度の投与速度を保つ必要があるという。

PT補正の目標値としては、通常の手術前の患者ではPT-INRで通常の2倍から1.5倍程度、脳神経外科領域では正常値の80%以内への補正が求められている。

実際のところ、計算どおりのFFPをそのまま投入すると、たいていの患者で輸液過剰となってしまうため、こうした凝固因子の補充を行う際にはFFPを用いるよりも凝固因子製剤を用いたほうがよい、と推薦している文章も多い。

FFPはまた、DICの初期の過凝固期にはAT-�の補充目的で、DIC後期の出血期には上記のような凝固因子の補充目的での効果が期待されている。しかし、いくつか行われた臨床研究では、いずれも小規模なものであったものの、FFPによるDICの予後改善効果ははっきりとは証明できなかったという。DIC治療においてFFPをどう位置付けるかはガイドラインごとに見解が異なっており、まだ一致した意見にはなっていない。ただ、明らかに出血性の合併症を生じているDIC患者についてはFFPの使用目的としては間違っていない、と書かれている。

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2004年11月22日

備忘録

aaaCafeからXREAに引越しをした際の備忘録。

aaaCafeは無料サーバーで200Mもの容量を貸してもらえ、CGIの設置も事前に用意してあるものであればクリックひとつで可能であるなどありがたい面が非常に多かったが、容量の大きなファイルに転送制限がかかるのが問題だった。

自分のサイトはPDFファイルを配るのが主な目的であったので、今まで作ってきたPDFファイルの半数近くがaaaCafeの容量制限に引っかかってしまい、事実上ダウンロードできなくなってしまっていた。本来はPDFを見直し、より軽量なものを作ればいいのだろうがいまさら画像を小さく作り変える根性も時間もあるわけが無い。

ちょうど、今まで使っていた掲示板(Wiki)が再び荒れ模様になってきたこと、鯖缶がライブドアに移行してから文字コードがおかしくなったのか、表示が変なままになったページがいくつか出てきたことなどをきっかけに引っ越すことにした。

自分のページは総容量120M程度、転送量が1日に200M前後ともはや無料サーバーを借りて運営するにはサーバーに負担をかけすぎているため、前回使わせていただいて快適だったXREAの有料スペースを申請。

htmlのファイル、PDFファイルはそのまま移動、掲示板スクリプトは以前使っていたPukiWikiが個人での使用にはいくつか問題があったため、新しいスクリプトを探すことにする。

Wikiは簡単にページを作れ、CMSとしても掲示板としても自由に使えるとても便利なものなのだが、一方で荒らされるとまったく無力であること、自分以外に書き手がいないとかなり寂しいこと、URLが非常に長くなってしまうことなど自分には不満足だった部分があり、今回は普通の掲示板を用い、自分が適当に書き散らしたいことにはblogを用いてみることにする。

掲示板

過去にも掲示板を荒らされた経験があるので(自分が悪いのは承知していますが…)、ある程度荒らしに強そうな掲示板を探したところ以下のようなものを見つけることができた。

-Force264

-Smart Board

-あじのたたき

-おやつBBS

-室町式掲示板

今回は設置が簡単そう、という理由だけでSmart Boardというスクリプトを使わせていただいた。いくつかの荒らし書き込みに対する対策がほどこしてあり、そんなに書き込みの多くない個人の掲示板で使うには機能も十分だと思う。くずはすくりぷとRNS Remixといった、より高機能な掲示板スクリプトにも興味があったが、そこまで人がくるような場所でもないのでたぶんその機能を生かすことはできないだろう。

blog

blogを提供しているサービスはたくさんあり、毎日見に行っているblogもいくつかあったので、以前から便利そうだな、とは思っていた。最初はどこかのblogサービスを借りてみようと思っていたが、はてなの一件もありこれ以上個人情報を漏らしたくないので中止。blogスクリプトの中で一番定評のあったMovable Typeを導入した。xreaでの導入についてはχ[kai] フリーでいろいろコソコソとの中のXREAとMovable Type3.1というエントリーに従うことで、ほとんど問題なく設置可能だった。ただ、mt.cfgの編集でいくつか#を消去しないといけないのを忘れ、何度かエラーを出した。

blogは、一人でいろいろ書き散らしてもCGI側でまとめてくれたり、インデックスを作ってくれたりを勝手にやってくれるほか、書き込みをしてくれた人のコメントを管理者サイドである程度コントロール可能であったりと、Wikiよりも便利な部分が多い。反面、誰でも好きなページを作れる自由はなくなるわけだが。

その他


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2004年11月21日

新しいスライディングスケールの考えかた

Hospital management of diabetes:Beyond the sliding scale

米国の統計では、入院患者の12.4%は糖尿病を合併しているという。実際現場で働いていて、入院した患者さんの血糖が高値であることはよく目にするが、従来こうした人の血糖値をとりあえず下げる方法として、スライディングスケールによりレギュラーインスリンを皮下注するほうがよく用いられてきた。

自分が研修医であったころは、入院患者の血糖値の目標は200-250以下、スライディングスケールもあまり厳しく設定すると低血糖の合併のほうが恐ろしいのであまり血糖を下げすぎないようにと教わってきた。

ところが最近になり、血糖値が高い状態は慢性的な合併症の増加だけではなく、急性期の患者の予後を少なからず左右しうることが報告され、抗ストレスホルモンとしてのインスリンの効果が注目されている。

入院直後から厳格な血糖コントロールを行うことで、たとえば急性心筋梗塞(DIGAMI study)、外科手術後の重症患者、心臓手術後の患者、脳卒中患者の予後、敗血症患者の予後といったものが改善することが報告されている。

こうした結果を受け、American Association of Clinical Endocrinologists では以下のような目標値を設定している。

-ICU入室患者の血糖値は、110mg/dl以下

-その他の入院患者の食前血糖値は、110mg/dl以下

-入院患者の食後血糖値は、180mg/dl以下

この値を達成するのには、従来のスライディングスケールではまったく役不足で、単にスケールを厳しくしただけでは低血糖発作が頻発してしまう。

このため、このreviewでは重症患者においてはレギュラーインスリンの持続静注を積極的に行うべきだとし、インスリンの持続静注を開始した上で2-4時間ごとに血糖チェックを行うアルゴリズムを提唱している。

インスリンの皮下注を行っている患者については、各食前(大体30分前)に血糖チェックを行い、あらかじめ設定した基礎インスリン量(持続型インスリンの皮下注)に加えてそれらをレギュラーインスリンで補充するとされている。

基礎インスリン量の決定は、1日に必要な総インスリン量(持続静注した総量から決定する場合)がたとえば24単位であった場合、持続型インスリンを朝夕6単位ずつ、さらにレギュラーインスリンを各しょくぜん単位ずつ皮下注するところから開始し、これに食前血糖値に応じてレギュラーインスリンを補充する。

プロトコールはかなり複雑で、そのまますぐに病院で実行することは困難かとも思うが、厳格な血糖コントロールによる予後の改善効果は馬鹿に出来ないほど大きく、何よりも身近にある薬剤で実行可能なところがありがたい。

重症患者の急性期からステロイド、バソプレシン、インスリンの3つを少量ずつ補充する「急性期ホルモン補充療法」の効果を以前から信じ、点滴ラインを増やしては周囲から「治療を無駄に複雑にしやがって」「馬鹿じゃないの?」と罵られることしばしばであったが、こうしたreviewが出てくると少しは味方が増えるかもしれない。

2004年11月19日

皮膚消毒にはクロルヘキシジンとイソジンの併用が有効?

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Combined skin disinfection with chlorhexidine/propanol and aqueous povidone-iodine reduces bacterial colonisation of central venous catheters

CVライン挿入時などの皮膚の消毒には、クロルヘキシジンのほうがポピドンヨード、アルコールに比べてより有効であるという報告がいくつかある。これはクロルヘキシジンのほうが、ほかの薬剤に比べてグラム陽性球菌に対する殺菌力がより強力だかららしいのだが、この論文では両者を併用したほうがより感染の頻度が減ったと報告している。

筆者らは140回CVラインを挿入した際、その皮膚消毒にクロルヘキジン単独、ポピドンヨード単独、両者を1分ずつ併用の3種類の消毒法を試み、カテを抜去後の培養で菌が生える頻度を比較している。

結果、消毒薬をどちらか1種類ずつ用いた際には従来どおりクロルヘキシジンのほうが感染頻度は少ない傾向にあったが、消毒時間の合計(2分間)を一致させても、どちらか片方の消毒薬よりはクロルヘキシジンとポピドンヨードとを併用したほうがより感染頻度が少なかったという(平均感染率20%に対して、消毒薬併用で感染率4.7%)。

カテーテル感染症の原因には皮膚からの細菌の進入以外に三方活栓からの細菌の進入が挙げられており、個人的にはそちらのほうの関与が大きいのではないかと考えていた。

皮膚の汚染が十分に除去されているならば、消毒という行為自体が無意味という意見を読んだこともあり、そうした意見にも結構説得力を感じていたが、やはり清潔操作の前には手洗いと消毒はまじめにやったほうがいいなあと感じた次第。カテ屋をやっていると、そのあたりは意外にいいかげんなので。手技時間が十分に短いならばそれでも大丈夫なのだろうが、自分にはそこまでの腕はない。