2008年2月28日

技術の先に見えてくるもの

技術は極限まで磨かれ無意識的に行われるまでにならなければ、
目的を達することは不完全になる。
自動車の運転はすべての操作が無意識的に行われてこそ、
景色を楽むことができる。技術者は技術の先にある成果を目標とすべき
コメント欄から抜粋

コメント欄を読ませていただいて、 こういう考えかたもあるんだな、と正直驚いた。「技術の先に見えてくる世界」というものは、 自分にとってはしばしば、「技術を商売に結びつけること」だったから。

注) 以降「エンジニア」「技術者」という言葉を、設計や製作を行う人たち以外に、 広告を考えたり、プレゼンテーションを行う人達にまで、しばしば拡張して用いています。 うちでは昔からそうだったので。

武芸的な、技術的な

「技術を極める」という言葉から、武芸的な何かを想像する人は多いのだろうか?

「武士の魂」日本刀は、極める道具。それを極めてしまえば、もしかしたら 「斬ろう」なんて思った瞬間、相手の胴が落ちている域にまで極め尽くせるけれど、 武器としての日本刀は無力。鉄砲には勝てない。

技術を極めていないのに技術のことを語る、自分みたいな輩は、「手段を目的として混同している」 なんて、たぶんベテランに叱られる。技術語ってる暇あったなら、もっと技術極めろなんて。

自分が想定していた「技術」というのは、それが日本刀なら、目標を「殺すこと」におく考えかた。

「日本刀」という技術を極めていった先には、もっと扱いが簡単な「槍」が来て、 さらにそれを延長していくと、鉄砲に行きあたる。

日本刀の技術を極めて、たとえば名刀持った宮本武蔵を10人作れば、その集団は 接近戦では無敵だろうけれど、現代のライフル銃を持った素人が100人集まって、 宮本武蔵の集団と戦ったなら、たぶん勝ててしまう。

名刀の値段はものすごく高いけれど、 AK47 あたりのライフルならば、安いところで買うと5万円もしない。

「技術を極める」という言葉から自分が想像していたのは、「コストダウン」と「大衆化」 であって、何かを深く極めていくようなやりかたは、武芸に近い感覚。

工学で使う「技術」とは別に、武芸的なやりかたには、何か別の言葉が要る。

技術者にとって誠意とは何か

「品質向上」なんかですら、あるいは技術の本質から外れた「無駄」な目標なのだと思う。

本当に誠意を持った、あるいは技術に対してストイックな技術者は、 プロダクトの精度を公差範囲に納めることができたなら、 今度は「どこから手を抜けるのか」を考えないといけない。

要求された仕様以上の精度を出すための努力というのは、 技術者のありかたとしては、むしろ「怠慢」だと面罵されるべきであって、 それを美談にしちゃいけない。

日本のエンジニアは、どこかでこんな誤謬に捕らえられて、技術を評論する人達もまた、 「もの作りは日本のお家芸」なんて、問題を悪化させる方向に煽ったけれど、 エンジニアの人達は、やっぱり舵の切りかたを間違えた。

技術者は、本当に品質向上を「売り」にしたかったのならば、 それをブランドイメージにつなげる努力を、 もっとあざとくやるべきだった。

ツーリングカー選手権のこと

1996年の日本ツーリングカー選手権では、ホンダアコードと、トヨタエクシブが、 優勝を争った。

ツーリングカー選手権の新しいルールが告知されて、一番最初に車を仕上げたのは、 マツダランティス。わざわざV6 2L のエンジン開発して、市販車にロールケージを 張り巡らせて、「プロトタイプカーと同じだけのボディ剛性を達成しました」なんて、 モーターショーで発表してた。

最初不振だったホンダは、見た目は市販車、中身は別物の化け物を投入して、 96年シーズンを勝ちつづけた。マツダみたいにまじめにルールを守ったチームは、 この頃もう勝てなかった。

「ホンダは汚い」なんて、いろんなメーカーがホンダを非難したけれど、 ルール解釈の議論はグダグダになって、そんな中でも ホンダは速くて、レースを勝ちつづけた。

シーズン終盤、「やっぱりホンダのポイント無くそうよ」なんて落しどころが見えた頃、 トヨタは新聞広告を出して、「トヨタ優勝」なんて大見出しをつけた。

同じ戦略も、視点の置きかたによって「汚い」と思う人もいるし、「すごい」と思う人もいる。

「勝つこと」を目標にして、ルール解釈を含めた「技術」を極めたホンダも、 「優勝」の文字を広告に入れることを目標にして、競技それ自体の破壊まで 視野にいれて頑張ったトヨタ自動車も、戦略に対する解釈は様々だろうけれど、 技術者として、みんな「頑張った」んだと思う。

「まじめに努力した」マツダの人達は、もしかしたらもっとも「頑張らなかった」のかもしれない。

マツダの技術者はルールを守って、結果はたしかに負けだったけれど、 その「負けっぷり」を武器にして、「どんな逆境でもルールを守る技術者集団」なんて イメージを作ることだってできた。

「まじめな技術者」というイメージは、もしかしたら「優勝」なんてものよりも ずっと高い価値を持っていたのに、技術者はそれでもイメージの運用をしないで、 ひたすらまじめに「ルール違反」したチームを叩いてた。

その態度はまじめだし、時には美談として語られるけれど、 本当は怠慢なんだと思う。あのときのマツダは、本当はトヨタ以上の大勝利だってできたのに。

日本一の乗用車は何か ?

初心者が運転するのにもっとも安全な車は何か ?

免許とってすぐの頃、いろんな自動車メーカーの人達が、わざわざこんなこと考えてくれた。

結論はすぐにでて、「やっぱりカローラが日本一」なんて結論。 ほとんど全員一致で決まったらしい。

カローラには、「国内では数km ごとに代理店があって、 日本国内では事実上、どこで故障が発生しても、歩いていける距離に修理工場がある」 という強みがあって、こればっかりは他のメーカーでは、絶対にかなわない。

車の絶対的な性能だけを論じれば、きっとどのメーカーの人にも「技術屋のプライド」が あるんだろうけれど、初心者がはじめて乗る車という限定をかけると、 車と、車を取り巻くサポート施設という、「系」としての信頼性は、 当時カローラにかなう車はなかった。

あの頃から、自動車を作る人達は、性能というものを「車単体」で考えてなくて、 代理店とか修理工場とか、車を取り巻くシステムを通じて、性能を論じていた。

技術者が、技術を極めた先に見るべきなのは、「極めて来た技術それ自体が不必要な世界」であって、 技術それ自体を極めるべき対象にする考えかたは、もしかしたらしばしば、 「改良」を拒んでしまって、進化を志向する人達の足を引っ張ってしまう。

問題を「系」として考えて、解決すべき目標を運用、改良しつつ、 要素の技術を大衆化、一般化していくことが、技術者が目指すべき「努力」。

それはきっと、同じ「工学」である自動車工学も、医療もまた、変わらないのだと思う。

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コメント

>凡百よりはよっぽど能力も高かったのでしょうし。
上手く他人の足を引っ張れば、
誰でも凡百より能力が高くなれますよ。

>できないで挫折中ですよ。
最近の自分の考えですと簡単な所に答えがあると思ってます。

>足背触ってASOと診断
個人的には、診断にたどりつかなくても、医師も患者もわけ分かんないままに治癒に帰着する
ようなやりかたを理想としていたり。現場から名人芸を外して行くやりかた。

>ポートフォリオ
戦略を確率論的に詰めてくと、結局不確実性とリスクのお話になって、そのへん一番切実なのが、
投資家の人たちなんですよね。。あの人達のやりかたとか考えかたは、すごく面白そう。

>こんなこともあろうかと
真田さんとかボヤッキーはエンジニアの鑑。。

一位:こんなこともあろうかと!!
二位:説明しよう!!
三位:予算沢山あって、使い切れねぇ
(日本の技術屋が言いたい言葉ランキング)

「こんなこともあろうかと!!」…って準備している余裕が
あるなら、そんな状態になる前になんとかしろ!!
っていう突込みを見たことが…

世知辛い世の中だ。まったく…w

もっと「系」を広く捉えれば、大衆化・一般化に特化する技術者だけになっても困ります。
尖ってる技術者がいて、大衆化・一般化を目指す技術者がいて、ビジネスを考える技術者がいて……というポートフォリオは必要なわけで。
となると、問題は結局その「系」全体の中での配分に集約されるのかも知れませんね。マンパワーにしろお金にしろ、投入できるリソースについての。

僕はその不器用で商売が下手なマツダのクルマが好き。クルマの運転が好きな人が作っているって感じられるから。運転していて気持ちよい。でも、品質という面では全く駄目で5年も乗るとボディがガタガタになってしまう。日本車に共通の弱点。トヨタが目標としてきたところの、消費財としてのクルマだから仕方がない。今は古いドイツ車に乗っていますが15万キロ、11年たっても日本車よりも乗っていて楽しいしボディもしっかりしている。世話になっている70代のメカニックのおじさんも20万キロくらいはエンジンもオーバーホールなしで大丈夫って言っていた。おじさんはポルシェしか扱わない職人。そして貧乏。ディーラーにはオイル交換の時にしかもっていかない。無駄な部品交換してお金をとるから。医療と一緒(^^;) クレームを恐れてのことらしいが。
僕の思う「技術」とは職人的なものであって、商売としての技術革新、改革などは意識していない。それはビジネススキル。医療も同じで「生活の糧」としての医業スキルはマニュアル化できるし、自分で系統的にマニュアル作りしなくてもある程度のもの(訴訟対策的なガイドラインなど)はすでに用意されているのでクールにそれを適用すればよい。しかし、それではブルーワーカーと同じなので、比較的知的レベルが高い医者達は倦怠を覚えるようになる(だいたい5年目くらいから)。そのとき研究という名の「人体実験」に没頭する者、「キャリアアップ」を目指す者、幻滅し開業し「ビジネス」に走る者、「赤ひげ」的な医者を目指す者などに分かれていく。いずれも茨の道。思考停止して没頭しないかぎりむなしさが心の奥底に存在し続けるから、いたたまれなくなる。お酒におぼれたり、女性に走ったり、モラルハラスメントしてみたり、お金の亡者になったり、自殺してしまったり。いずれにしても燃え尽きてしまうリスクを抱えてしまう。
先日、先輩の開業医に頼まれて代診を2日ほどしてきたのだけど、そこにバイトに来ている大学病院の中堅医師の診断の適当さに怒りを覚えた。それもあって今回の発現につながっているのだけれど。怒りはエネルギーに変えれば有効活用できる。
後日、そのクリニックのスタッフに言われたこと「先生、何をしたのですか?全員の手でも握ったのですか?実は30人ほど診察した患者さんのうち10人くらいが、今の先生に次も診てもらいたいので診察日を教えて欲しいと聞かれたのだそう。今までそんなことは一度も無かったと。
「普通に診察しただけです」
普通の診察すら絶滅しかけているようです。
ちなみに僕は内科専門医ではありません。
でも、CRP24、WBC13000、右大腿筋痛、発熱なし、呼吸音正常、心電図正常の患者さんの足背触ってASOと診断し紹介状を書きました。大学病院の医師達は抗生剤と湿布を処方し3日も様子見をしていました。笑い話のような、実際の医療現場でのできごとです。
怒り通り越して「死ね!」「医者やめろ!」って言いたいところですが、、、同級生ですので(^^;) 何も言いませんでしたが。

>そのような姿勢の医師には…
一言「死ね」って書いたほうが分かりやすかったかもですね。。

>今のズルイ仕組みをこわしたら
私は案外、その「ずるい仕組み」それ自体が、それでも最適解なのかな、と思います。
今までのシステム破壊して、数万人オーダーの人間殺してきた独裁者の人達だって、
何かを「よく」したかったのだろうし、あの人達は少なくとも、凡百よりはよっぽど
能力も高かったのでしょうし。

>何がエレガントなのかは後になってからしか分からない
「よさ」で括られるパラメーターは、誰かの観察を経て、初めて実体化する値だから、
やってみるまで分からないですよね。確率論的な考えかたが大切なのかも。現場にも、
現場の努力を評価する側にも。

エレガントでありたいというのが技師の夢ではないですか
何がエレガントなのかは後になってからしか分からないですが

通りすがりの医師さん、破壊を頑張れ!
 私も従来の福祉ってやつを破壊したいぜと思ってるけど、
 できないで挫折中ですよ。

 俺はボケてる年寄りを大事にしたいという願い持ってるけど、
 でも、いちばん死んでもしょうがないじゃないか
 という人たちが、気持ち良く生きてもらえて、
 そうしてそういう人が死ぬときは
 気持ち良く死ぬこと出来るような仕組み出来ないかな、
 とあれこれ考えているけど…
 たぶん生き物としての生き死にに逆行してることを
 俺は目指してるんだなと覚悟してるから、
 …挫折中ですよ、ハハ。

 壊せ、壊せ、壊せ…。
 今のズルイ仕組みをこわしたら、
 そして金をかけないでやれる仕組みが、
 新しい何かの仕組みが、
 生まれるかも、と妄想かなあと
 でも必死で壊したい…。

 ブログ主さん、場所借りました、失礼。

通りすがりの医師っていう名前は、、、医師会を敵に回したくないっていう意味があってのことです。現在の医療を破壊したいってい目標があるので、つぶされては困るのです。それと、以前のコメントがあまりに哲学的で、前向きでないと思っていたので、そのような姿勢の医師には通りすがりの医師とでしか関われないとも思っていました。一皮むけることを期待しております。

コメントを引用いただきましてありがとうございます。僕はドラッカーを敬愛しており、自分もそのように生きたいって思っております。現在NPOを設立準備中です。ガン患者さんのリビングウィルをさらに進めて、現在問題化しつつある認知症の患者さん達が症状が進む前に生前に遺言、誰に世話をしてもらいたいか、施設に入るのか、などなど、を法的、医学的見地からサポートするための組織です。認知症関連では報道ステーションで何本か番組作りに参加しており、次の企画も進めております。
現在の医療政策を根本から破壊するのが僕のライフワークです。出来高払いという制度はヤブ医者(診断も治療も洗練されていない医者)の利益を拡大することはあっても、まっとうな医療を行っている医師達にはつらい状況です。赤ひげとまでは行かないまでも、それに近い医療が日本に普及することを願ってやみません。

=~ω~=) Air

(≧ω≦)o 空!

 より密に索合された全体性への資源分配でしょうか。

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