2005年1月21日

ローテート研修総括

研修医が病院内の各科を回るシステム、ローテート方式の研修システムは、そろそろ最後の4半期に入る。いままでいろいろな病院を転々としてきたが、この1年間は大学病院で研修医を迎える側からこの研修システムをみることが出来た。分かったことをいくつか。

ローテートは「勝ち組み」と「負け組み」が非常にはっきりと出る

典型的なローテート研修では、研修医は7-8人のチームで3ヶ月ごとに各科をまわる。実際に仕事をしながらの研修で、3ヶ月という時間は非常に短い。全くの初対面の人間どうし、同じチームの一員として違和感なく働けるようになるには、早い研修医でも2週間、遅い研修医になると2ヶ月はかかる。

研修医が新しい科のスタッフから受け入れられるまでの時間は単なるお客さん、実のある研修は出来ない。この期間を短くできるレジデントは「できる奴」「優秀な奴」として同じ3ヶ月の中でもより多くの教育を受けることができる。一方、人見知りをするレジデント、自分を表現することが下手なレジデントは「お客さん」でいる期間が長く、結果として「やる気のない奴」というレッテルを貼られてしまう。

自己表現の上手な人、初対面の人と友達になるのが早い人は、ローテート研修というシステムでは非常に有利になる。一方で地味な人、人見知りをする人、人の陰に隠れやすい人は不利だ。

いくらまじめに勉強してきたところで、実地の臨床で必要な知識といわゆる「医学知識」とは全く違う。逆説的だが、病理や生理の知識が役に立つのは病棟業務が落ち着いてこなせるようになった3年目以後のことで、1年目や2年目のうちはそうした知識をいくら豊富に持っていても評価の対象にはならない。

これが従来型のストレート研修なら話が違う。地味な奴でも2ヶ月もいっしょに働けば顔も覚え、レジデントの性格や「ノリ」といったものも把握できる。ある程度時間がたって、チームで一緒に働けるようになったときには、寡黙でまじめなレジデントは「確実さ」「信頼感」といった自分の特質をアピールできる。

しかし3ヶ月しか時間がない場合、やっとこうした部分が周囲に認められたときには科が変わる。レジデントの情報は全くといっていいほど次の科には引き継がれず(逆にいうと、大きな病院では「研修医のブラックリスト」など存在し得ない。みんな自分のことに忙しすぎて、作るひまがない)、新しい科ではまた「よくわからないけど地味な奴が来た」からやり直しである。

ローテーターは後半のチームほど点数が辛い

どこの科にいっても、年の後半に回ったレジデントに対する評価は厳しい。1年目の研修医とはいえ、後半に入ってくると病棟が研修医に期待する部分は大きくなり、実際レジデントが病棟業務で活躍してくれることも多くなる。

自然、スタッフもレジデントの力に頼ることが増え、結果としてチーム換えが行われた際、「あいつらこんなことぐらいやっておいてくれたのに、何で先生出来ないの?」という台詞が病棟で飛び交うことになる。

もちろんまた2ヶ月もすれば、どのレジデントもほとんど同じように力を発揮してくれるのだが、スタッフの中には以前の研修医の思い出が残り、「あいつらのときは即戦力になったのに…」という記憶は現在回っているレジデントへの厳しい評価につながる。

公平な評価など期待できない

従来型のストレート研修にも欠点はある。卒業と同時に選択した科以外をローテートすることはまずありえない。研修医時代の初期にスタッフの機嫌を損ねようものなら、その後の一生が台無しになる危険だってある。

折り合いの悪い上司とぶつかり、まともな評価が与えられないまま心を病み、「潰された」研修医も全国レベルではものすごい数に上るだろう。

ストレート型、ローテート型の研修システムはどちらが優れているというものではなく、今のところは「臨床研修」というゲームのルールが変わったに過ぎない。スタッフサイドの意識改革が今後もあり得ない以上、ルールがどう変わっても「誰かが不利になり、誰かが有利になる」ことは変わらない。

ルールの変更により、従来は不利をこうむった研修医は有利になったかもしれないが、一方で従来は不利でなかった「まじめで地味な研修医」という連中が不利になったというだけだ。

ならどうすればいいのか

研修医をまともに評価しろ、というお叱りの声は必ず出るだろうが、スタッフだって人間だ。しょせんは研修医のごく一部の部分しか評価できるわけはないし、好き嫌いもある。「スタッフはきっと、どこかで研修医の努力の成果を認めてくれる」なんていう話はあるわけがなく、努力をするにしてもスタッフの見ている目の前でやってくれなければ分かるわけがない。

現在のローテート研修のシステムの中で自分を生かすには、一刻も早くチームに自分を紹介すること、「私はこんな奴です」という分かりやすいキャラクターを自分で演じつづけること、「この人とはどうやっても合わない」と思ったら絶対に自分を責めずに、次のローテーションまでの時間をじっと待つことである。

つまらない上司にあたってしまった不運を嘆いている時間はない。

コメント

>小児科医4年目様

個人的にはこの新制度は(そして今後の「救急」「地域医療」などに重点を置く新々制度は),
救急体制・小児医療体制の不備を現場(特に医師)になすりつけるための制度であると認識しています.

こういう制度で研修しているはずだから,全科当直もできるよね,子供も診れるよね,診れないのは君が悪いんだよ,みたいな.

>今は先が見えません
鈴木健想みたいな書き込みでしたね…
通りすがり様、コメントありがとうございました。

ご多忙のことと拝察いたします(主に語尾から)。
本当にお疲れ様です。

ただ、研修方法を選択可能にすることは不可でしょう。

もともとスーパーローテート方式導入の遠因は救急当直の危険性(医師/患者とも)を軽減することにありました。確かこんな論調だったと思います。

�救急当直時に不適切な判断/処置が行われた事があった。
�その原因は、当直担当者が特定の診療科での経験しか有さないことである。
�よって研修初期から数多くの診療科での経験を積むことで、将来的には救急当直の安全性を向上させることができる。

定性的にも定量的にも突っ込みどころ満載の議論とも取れますが、なぜかうるさい人とえらい人はこれで合意してしまったようです。

ですから、研修方法を選択制にするという変更はありえません。

P.S. 疲れている人をげんなりさせて何の意味があるのか分からない投稿ですが、匿名による意味なし文ということで、悪しからず。


皆様、コメントありがとうございます。
ローテーション制度、このまま腹をくくって10年ぐらいこの制度でやる覚悟が国にあるならば、そのルールの中での最適解が見つかるはずなんですけどね。
もう数年先にはこの制度は中止されるのが規定路線のようなので、こうも制度が変わると研修医としても目先の利益を追求する以外の選択肢はなくなってしまうでしょう。
小児科、産科といった専門的な研鑚を積まなくてはいけない科の研修には、今の制度は大いに不向きですし。
今は先が見えません。

臨床研修医制度はっきりいって反対です。
地方の救急病院で研修をしている研修医は、看護婦さんが採血、点滴全部してくれるので、針そのものをさわったこともない。2年目で小児科にまわってくる研修医は、採血、点滴まったくとれず、悪いけど全然役にたたない。夜間の救急外来の当直はもちろんできない。(虫垂炎も、腸重積もみんな便秘症で帰す、1ヶ月の赤ちゃんの発熱の対処はまったくできない、などなど)でもですね、1ヶ月とか2ヶ月という単位でまわるので、小児科の考え方なんて身につくわけもないので、当然なんですけどね。

それだけならまだいいのですが、、、そんなできない医者であるのに他の科をまわったことをやたら誇りにしていて、たった数ヶ月しかまわっていないくせに、「自分は外科をまわっていたから虫垂炎の切除はできる」とか「産科をまわったからお産は全部とれる」とか、もういかにも自分は何でもできるような錯覚に陥っているのです。みんな自信過剰。
地方の病院は看護婦さんやさしいから、口の利き方もえらそう。
本当にその科を二年、三年としてきた医者は、「小児科の当直はこわい」「お産はこわい」ということを身にしみてわかっているはずです。それがわからないことがこわいと思うのです。

やる気がない科をまわっている人にとっては、この制度はとりあえずこなす2年なのでは?そんな人にも懇切丁寧に教えるほど、私たち4年目以上の先生たちは暇ではないのですよ!この制度のせいで下がいないから。病棟で20人の入院をもちながら、外来して、眠れない夜の当直で冬は50人近くの子供をみているのです。その間救急車できたけいれんをみたりするのです。そんな当直を月に8回もこなすのですよ。なのに、彼ら研修医は夜間の当直せず、「勤務時間外」っていって17時に帰ってますよ。なんでこんな上の先生たちばかりがこんなに働かないといけないんですか。点滴、採血、ルンバールがうまくなるのはうちら上ばっかり。もういいよ、これ以上うまくならなくて。

医者の世界は範囲が広いのだから、そんな2年間で全科まわったって何も身につかないのです。2年間スーパーローテートした先生たくさんみましたけど、誰一人として3年目使えません。(でも使えないことを自覚していないので、ますますその残った科の上の先生に嫌われる)そして小児科みたいな特殊なところでは大人の知識が邪魔をして、へんなことしかしない。(たとえば小児科は、抗生剤を投与する前に、何がフォーカスかしっかりと見つけないといけないので、検査を少し過剰気味にしますが、老人ではそんなに検査をするのはおかしいとかいう理由で、sepsis work upせずに勝手に抗生剤をなんとなく始めていたりする、そして病気を見逃す)

ローテート方式は、たとえば内科を2年間かけてローテートするとかなら意味あると思うんですけどね。

あと地方の病院は大学の医局から派遣されてきている医者が半数なんだから、医局に残る人が減ったら、そのまま医者が減るのはこの制度する前からわかっていたわけで、何で今頃それを騒ぐのか、よくわからない。厚生労働省は相変わらずあほあほだ。

悪いけど、一旦地方の病院に出ると、逆に医局にも帰られなくなるんだよね。そしたら研究とかもできなくなるよ。日本の医療の質は落ちます。
そして研修医は使えない。なんのいいことがあるんだろう。

ローテートしたい人はすればいい。しなくない人はストレートにすればいい。なんでそれじゃだめなの?

表ページにupされていたので今初めて読みました。
去年1年間大学で研修しましたので、
なるほど頷ける内容です。
自分が最初に回った科の研修医に後で話してみると
「今回ってきてる奴らは使えない、働かない」
と口を揃えて言ってました。
私が後半に回った科の指導医もそんなことを前の研修医に言っていたのかもしれません。
3ヶ月毎に仕事内容も人間関係もリセットされるのはお互いしんどいものですね。
おまけに今2年目ですから、1月で変わる科もあり、指導医サイドより看護師サイドとの関係が大変です。

コメントを見ていると、指導医側の方が研修医側よりも悩むことが多いのかなというようにも思えてきました。

我々スーパーローテ世代が指導医になった時には状況は変わるのでは、というかもっとお互い良い関係でやれるようにしたいものです。

こんな古い話題にいまさらどうしたんですか…。

変なこと書いてるのはいまさら指摘されるまでも無いのですが、何か?
否定的な意見を下さるときには、一緒に「あるべき姿勢」「正しい研修とは」なんかを書いてくれるとうれしいです。

春ですねえ…。
釣りにはちょうどいい季節。

読みましたけど、書いてる事がはっきり言って変です。あなたはパンツ下ろせ、といわれるとおろすタイプの研修医だったんでしょうが、そりゃアホなだけですよ。スタッフ第一に考えてるその姿勢もかなり変です。

正直な感想は

触らぬ研修医にたたりなし、

です。

それでも
一部の人の為に受ける不利益を思えば、
自分自身の研修医時代に受けた
色んな諸先輩(先生や看護士さんは勿論、患者さん)
からの指導を生かしたい、伝えたいと思うからこそ、
それを受け止めてくれる
頑張りやさんがいらっしゃるからこそ
毎日やっていけるのです。

お互い頑張りましょう。

昔はブン殴って分からせればそれで済んだんですけどね‥。

最近はそうしたことも無くなり、医師同士の人間関係も希薄になるばかりです。このままでは危ないと皆思っているのですが、解決策はまだ見えてきません。

研修指導医です。

現在 指導中の研修医さんに注意をしたところ
聞き入れられずに「ほっておいてください」
といわれ、毎日 彼女が帰ってから
患者様への説明をやり直す羽目に陥っています。

権利意識の高い方なので、
早々にお帰りになりますし、
研修中でない科の事についてはご自分でなさらず
他科に丸投げなので
なんとかなっておりますが。

まじめな研修医さん.
頑張ってね.パンツ脱ぐだけがコミュニケーションじゃないけど,場の雰囲気を読む練習にはなるからね.

看護師の方ですか?コメントありがとうございます。

今の時期、ローテートしているだけの興味のない科であっても、「自分は医師である」という自覚だけが良い形で出ている人、悪い形で出ている人がはっきり分かれているように見えます。
やる気が有る振りをして実際には何も見ていない人。
試験は要領で通るかもしれませんが、人間関係も上手に立ち回れば表面上は出来る医師に見えるかもしれませんが、皆さんは日々「人の生命」に直接携わる仕事をしているのであって 何かあればその人にどんな形であっても最早お詫びの仕様もないということを理解して仕事しておられるのか、と思う人が時々見受けられます。
皆さんは上司である指導医に率直に質問するのも大事ですが、質問できるように学習する姿勢を忘れてはおしまいなのではないでしょうか?
先日も、ある研修1年目医師が指導医に対して
「受け持ちは私ですから」と治療方針に対して反論しているところを見ていましたが、現実には黙ってその指導医の先生が当直でもないのに隠れて治療を続行して大事にはいたらなかっという症例も見ています。

学生のような気分で過ごすのならまだしも、
変なところで「医師であること」を鼻にかけて振舞うのは辞めていただきたい。
手技を行いたいのであれば 責任を取ることを考えて行動していただきたい。
やってみたかったから、では済まされない行為であることを、そろそろ忘れているのではないですか?

要領が悪い、一生懸命やっている先生方、大丈夫、見ている人はいますよ。
必ず、わかります。

小さな失敗は恐れなくて良い。
友達に恵まれたから良い医師、そんなことはありません。
表面上の付き合いに失敗するかどうかなんてどうでも良い。一生懸命、前に向かって進もうと努力する人こそ、必ず、昼夜を問わず病棟スタッフは見ているし、上司も見ています。
悪く言われることがあっても、そんなことでへこたれてる暇はない(そんな暇があったら眠るのです!!)。

頑張れ、まじめな 研修医さん。

ありがとうございます。またですか…。

2ちゃんねるで晒されていましたよ。

そう悪い評価ではありませんでしたが。

同感です。今回ってくる研修医諸氏の中には、一定数マイナー科志望の人がおり、彼らにとっては内科のローテートなど無駄な時間でしかないのかもしれません。

ローテート研修を有効に生かすには、情報の共有によるローテート初期の自己紹介時間を減らすのが大事だとおもいます。新しい研修医がローテートしてくるたびにそのことを強調するのですが、いまだに同級生のメーリングリストや掲示板といったものが運営されている気配はありません。

パソコンやインターネットが一般化しても、そうしたことをするレジデントは少数派なのでしょうか。

彼らぐらいの世代には、「一人に教えたことが2日後には学年全員の常識になっている」ようなことを期待しているのですが…。

私も大学病院で研修医指導をしておりますが,おっしゃることに加えて,研修医自身の質にも相当のばらつきがあるように思います.自分が将来志望する科でない科にローテートすると,それでも精一杯がんばろうという気概の見えるものと,最初から全く興味ない態度が見え見えのものといるように思います.
指導する側としてはやはり,やる気のあるものに自然と力を入れて指導してしまいますから,そういった意味でも勝ち組,負け組の差がはっきりしてしまうのではないでしょうか?

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