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2004.12.10

高用量のAT-・ス製剤は敗血症の予後を改善しうるか

Effect of long-term and high-dose antithrombin supplementation on coagulation and fibrinolysis in patients with severe sepsis

敗血症の急性期には体内での凝固能が亢進し、AT-・スが消費されることが分かっている。このため、敗血症患者に対してAT-・ス製剤の投与により予後を改善することが試みられてきたが、4日間程度の短期間の投与では、予後の改善効果を証明することはできなかった。

このトライアルでは、対照群20名、AT-・ス群20名の計40名の敗血症患者にAT-・ス製剤を14日間投与し、患者の凝固系のパラメーターがどう変化するかを検討している。

患者は重篤な敗血症と診断されたICUの患者で、トライアル開始と同時に患者のAT-3を測定、AT-・ス濃度が正常値の120%になるようにAT-・ス製剤を連日投与し、凝固能の変化を測定した。

結果、AT-・ス投与2日目よりAT-・ス血中濃度は目標値に達し、その濃度は14日間にわたり維持することができた。凝固のパラメーターについては、TT/PT/フィブリノゲン濃度はAT-・ス投与6日目ごろより有意に正常値に近づき、血小板数は実薬群、コントロール群とも14日間の経過で徐々に正常化した。

また、活性化プロテインCの濃度もAT-・ス投与群で有意に上昇していた。

敗血症の予後の改善を証明した薬剤のひとつに、活性化プロテインC製剤がある。この薬は当分の間は日本に入ってきそうも無いので、代わりに使えそうなものとしてアンスロビンのようなAT-・ス製剤がある。

このスタディでは予後については全く論じていないが、AT-3も大量に投与すると活性化プロテインCを投与したのと同じような凝固パラメーターの変動を得ることができると結論している。一方、このスタディの期間中、実際に敗血症で亡くなった患者さんの数はAT-・ス投与群のほうがわずかに多いのが気にかかる。もちろん、統計的に有意差は無いのだが。

一番の問題点はコストだろう。アンスロビンが500単位のもの1バイアルで4万円。このスタディどおりの量を使おうとすると、1日量でだいたい4バイアルは必要なので、この14日分で224万円。実際には敗血症の改善に応じて投与量は減るのでここまではかからないだろうが、結構高コストになる。ICUの治療にコストなんて関係ないが、ちょっと勇気のいる金額ではある。

保険屋さんは許してくれるのだろうか?

少量のバソプレシンには腎保護作用があるかもしれない

敗血症性ショックをはじめとする血管拡張型のショックの患者に対して、近年バソプレシンの持続静注が行われるようになり、よい成績が報告されている。

こうしたショック状態になった患者ではしばしば尿量の低下が問題になるが、バソプレシンを少量持続静注することで、こうした問題を解決できるかもしれない。

バソプレシンは本来は抗利尿ホルモンとして知られていた物質であるが、ショック状態の患者に用いた場合、同程度の血圧を維持していても、カテコラミン単独使用で血圧をコントロールした場合に比べて尿量の増加が報告されている。

動物実験で敗血症急性期の高心拍出量状態を作り出した場合、心拍出量は増加しているものの、血中クレアチニンの増加、尿量の低下が観察される。これは何らかの理由でGFRが低下しているからであるが、その理由としては腎臓全体の血流低下によるよりも、輸出細動脈が輸入細動脈に比べてより拡張してしまっているからと考えられる。

バソプレシンは少量で用いると輸出細動脈を収縮させる働きがあり、見かけ上のGFRが増加する。このため、敗血症の急性期の尿量低下に対しては尿量を維持し、腎保護的に働く可能性がある。

敗血症の患者でのノルエピネフリンとバソプレシンとの比較トライアルでは、両者とも血圧は同程度に維持することができたものの、ノルエピネフリン群では尿量の変化は見られなかったのに対し、バソプレシン群では有意な尿量の増加、75%のGFRの増加が見られている。

バソプレシンを使用する量としては、0.01-0.04単位/分としているものが最も多い。この量で1日用いると、1日量はだいたい14-57単位(20単位/1A)となる。

敗血症で入院するような人は、たしかに尿量が低下して治療に難渋する人が多い。血圧が低いのであまりラシックスなど用いたくなく、少量のDOAなど用いてもあまり効果が実感できない。かといってラクテックを狂ったように落としても、今度は浮腫と肺水腫が怖い。

今度何かの機会に使ってみよう、とも思うが、自分の周りは心原性ショックばかり。こちらの患者さんにはバソプレシンの効果は期待できないような気がする。