2004.11.18
Atenolol in hypertension: is it a wise choice?
ロサルタンとの予後改善効果を比較したLIFEスタディの結果を受け、そのコントロール薬であったアテノロールの効果を過去のスタディから比較研究した報告。
アテノロールはプラセボと比較して有意に血圧を下げたものの、予後の改善効果はプラセボとかわらず、また脳卒中の発生頻度はプラセボに比べて高い傾向があった。実薬との比較では、アテノロールはほかの薬剤に比べて予後、合併症頻度とも高い傾向があった(有意差は出たものとそうでないものとが混在)。
一方、ほかのベータ遮断薬では、特に心不全や心筋梗塞後の患者に用いることで予後の改善や心機能の改善効果が報告されている。
アテノロールの今回の結果の原因としては、アテノロールが水溶性の薬剤で、心筋繊維化の抑制にかかわる中枢神経中の薬剤濃度が低いこと、心肥大を抑制する効果がアテノロールでは弱い(十分に証明されたスタディが存在しない)こと、いくつかの降圧薬で示されている血管内皮細胞機能の改善効果がアテノロールでは証明されていないことなどが挙げられている。
うろ覚えだが以前にも、心不全で効果のあったベータ遮断薬(メトプロロール、ビソプロロール、カルベジロール)はいずれも脂溶性なのに対し、心不全のトライアルで予後改善効果を証明できなかったベータ遮断薬(ソタロール、ブシンドロール、ザモテロール、ナドロールがあげられていた)はいずれも水溶性のものであったというreviewがあった。
内科の研修医をはじめてすぐのころ、当時の上級レジデントの先生からこんなことをいわれた。
君たち研修医は、僕たちに比べて頭は弱く、手もうまく動かせない。患者さんとの話も上手にできなければ、患者さんの状態の変化を感じ取る目も曇っている。もちろん聴診器ひとつも満足に扱えない。
いわば、君たちは上級生に比べて目も、耳も、口も、手もすべての部分で劣っているわけだが、足だけは年上の先生方よりも優れているかもしれない。
患者さんや病棟スタッフからのコールがあったら、決して電話で済ませるようなことはせず、極力現場に行くように心がけなさい。最初のうちは使えなくて周囲から信頼してもらえなくても、呼んだら必ず現場にきてくれる医師は必ず信頼されるようになる。
そうしていくうちに判断力や知識が上達してきたとき、こうした周囲からの信頼感は必ず君たちの力になるだろう。
そんなことをいわれてからはや10年、足のほうはすっかり衰えてしまったが、ほかの器官は年次なりに発達したのだろうか?
人工呼吸器による副作用(Ventilator associated lung injury 以下VALI)が最初に報告されたのは、1745年のことである。
VALIの正確な原因はまだ解明されていないが、その原因として挙げられているのは以下の3つである。
Volutrauma(容量損傷)
気道の周期的な虚脱
Barotrauma(圧損傷)
Volutrauma
過大な1回換気量により肺胞が過伸展されると、肺の浮腫を生じ呼吸機能が悪化する。この減少は、病的な肺ではより早くから生じる。
容量損傷は、過大な換気量による肺の毛細血管に対する直接的な障害の結果生じるといわれている。肺胞が過伸展された結果、肺の毛細血管の透過性が亢進し、肺胞周囲の水分の貯留を生じる。この肺胞周囲の水分と蛋白質は、肺から分泌されるサーファクタントの作用を障害し、結果として肺のコンプライアンスを低下させてしまう。
ARDS患者の場合、患者の肺のCTを撮ってみると肺は以下の3つの状態が混在していることが分かっている 。
完全に虚脱し、呼吸に参加していない肺胞
吸気時には空気が入るが、呼気時に虚脱する肺胞
正常な換気を行っている肺胞
このため、ARDSの患者の場合は正常な人に比べて換気している肺胞の数が少なく、たとえ常識的な1回換気量で換気を行っていたとしても、患者に残っている正常な肺胞には過大な1回換気量になってしまう。
周期的な気道の虚脱
ARDSで病的になった肺胞の一部は、換気にあわせて開放した状態と虚脱した状態とをいったり来たりする。この状態により生じる肺の損傷は atelectraumaと呼ばれている。
この、周期的に生じる気道の虚脱、開放は肺胞にダメージを与える。この運動により、肺胞内のサーファクタントは気管側に流出してしまい、虚脱した肺胞を再び開放するためにかかる圧力は肺胞の内皮細胞を障害する。
Barotrauma
Volutraumaの考え方以前に主流だったのが、気道内圧が高いこと自体が肺に障害を与えるという考え方である。
肺に過大な圧力を与えると肺の内皮細胞は障害されるが、この働きが病的な肺でどれだけ肺障害の成立に関与しているのかはまだ議論がある。
原理的には、Barotraumaは1回高い気道内圧で換気しただけでも生じうる。
肺以外の臓器への人工呼吸器の副作用
ARDSを生じた患者の多くで多臓器不全を生じるが、この原因の一つが人工呼吸器であるという考え方がある。最近の動物実験からは、人工換気により以下の2つの状態が引き起こされると考えられている。
炎症性サイトカインの増加
肺を通じた細菌の進入
炎症性サイトカインの増加
ARDSの患者には多臓器不全が合併することが多いが、これは多臓器不全に伴ってARDSを生じるのではなく、 ARDSに陥った肺、あるいは人工呼吸器による肺障害自体が多臓器不全を引き起こす引き金になるという考え方がある。
ARDSやALIの状態になった肺には、好中球をはじめとした炎症細胞が多数浸潤している。このため、肺を通過した血液にはこうした細胞から分泌された炎症性サイトカインが多量に含まれ、これが多臓器不全を引き起こす原因の一つになっていると考えられている。
この現象は、実際のARDSの患者で混合静脈血と肺静脈血1とを比較した報告で、肺静脈血のほうが血液中の炎症性サイトカインが多かったことでも確かめられている。
肺を通じた細菌の進入
動物実験の結果ではあるが、人工換気により気道内圧が上昇した肺胞からは、細菌の血管内への進入がより生じやすいという報告がある。肺胞の浮腫、肺胞サーファクタントの欠乏などがその原因と考えられている。